太陽系の中心の恒星
2014年10月24日の巨大黒点 筆者撮影 |
太陽は主系列星とよばれるありふれた恒星だ。星の年齢からすると壮年期になる。
約45億年前に地球などの惑星とともに、超新星爆発の残骸のガスから誕生した。
太陽はほとんどが水素とヘリウムでできた星だ。
太陽の表面
太陽観測衛星ひのでが写した太陽表面の粒状班 |
ガスでできた星なので、地表があるわけではない。ましてや生命体が存在できる環境ではない。ただし、中心部に行くに連れ、ガスとは呼べないような想像を絶する超高圧になっている。
光球の上に高度2,000km以上に広がっているプラズマの層が彩層(さいそう)。温度は1万℃くらい。
大槻教授でおなじみのプラズマというのは、そういう物質があるのではなく、物質の原子核と電子が分かれて自由に飛び交う状態のことで、固体、液体、気体に続く第4の状態である。
太陽の内部や表面は高温高圧によってプラズマ状態にある。
太陽の内部
太陽の中心部の高温高圧な状態の下、水素原子どうしが融合してヘリウムになるという核融合反応が起こっている。この際に莫大な光と熱エネルギーが放出され、それが太陽を光り輝かせている。この核融合反応では、1秒間に6億トンもの水素が核融合反応を起こして5億9500万トンのヘリウムになっている。その差の500万トン分の質量がエネルギーになる。これは1メガトンの水素爆弾10億個に相当するエネルギーである。
核融合反応で生じた光(光子)は、内部の密度が非常に高いためまっすぐ進めず、なかなか太陽の外に出ることができない。表面に達するまでなんと数十万年もかかってしまう。
そして光が太陽表面から出てからは、地球に届くまで約8分かかる。
遠い将来、太陽内部の水素があらかたヘリウムに変わってしまうと太陽は膨張し始める、そのまま地球を飲み込むとも、太陽の膨張に合わせて地球の公転軌道が広がって飲み込むことはないとも言われている。
最後に太陽は内部の物質を放出し、小さな薄暗い星、白色矮星になると考えられている。
太陽の大気、コロナ
皆既日食時に見られるコロナ太陽を覆っている大気がコロナだ。
皆既日食の時、月に覆い隠された太陽の周囲に輝いているのがそれだ。コロナはプラズマ状態になっている。
太陽の表面温度が約6,000度であるのに対し、コロナの温度は200万℃にも達する。これだけ温度に差がある理由はまだよくわかっていない。
黒点の増減周期と地球への影響
太陽活動が活発になると、表面には黒点という黒い点が現れるようになる。
黒点は太陽内部の磁力線が表面に出てきている場所だ。
黒点の温度は約4,000度と、周囲の温度約6,000度に比べて少し低くなる。内部からの熱が周囲よりも伝わりにくいために暗く黒く見えるのだ。
黒点は太陽と比較すると小さいが、実際は地球がすっぽり入ってしまうくらい大きい。
黒点の数=太陽活動の活発さには周期があり、最も少ない時期→最も多い時期→もっとも少ない時期というのが11年周期であることが観測からわかっている。
太陽活動の11年周期が乱れた後は、その後数十年間にわたって太陽活動が停滞して地球の寒冷化が起きるという規則性があることが、ここ1,000年の間の気候変動の調査でわかった。
2011年はこの11年周期の太陽活動の極大期になるはずであったが、黒点の数が増えておらず、太陽活動の周期の乱れが確認されており、今後の気候変動が懸念される。
フレアの影響
太陽表面ではフレアという大規模な爆発現象が時折起こっていて、太陽活動が活発になって磁力線が強くなると起こりやすくなる。フレアによって大量のX線、紫外線、太陽表面のプラズマなどが宇宙空間に放出される。
巨大なフレアによって発生した大量のプラズマが地球に到達すると、地球の磁気が大きく乱され、オーロラが増えたり、地上の送電設備が破壊される、人工衛星が故障してGPSなどが使えなくなる、長距離無線通信に障害が起きるといった恐れも生じる。
1989年にカナダのケベック州で起きた9時間にものぼる大停電は、そうした太陽活動の活発さから起きた現象だと見られている。
フレアによる強い太陽風は国際宇宙ステーション(ISS)の乗組員の体にも悪影響を与えるので、NASAなどでは宇宙天気予報を出し、非常時にはISSの中でもより宇宙船の影響を受けにくいエリアに乗組員を退避させている。
太陽活動に守られる地球
フレアがなくても太陽風と呼ばれるプラズマの流れは絶えず放出されている。この太陽風は太陽系の外からの有害な宇宙線(放射線)と衝突してこれを防ぐ働きがある。これによって宇宙線が地球に降り注ぐ量が減り、生物が安全に育つのを守っていると言える。
逆に太陽活動が衰えると、地球に降り注ぐ宇宙線の量が増えることになる。
宇宙線が地球の大気の中を通ると、空気中の原子や分子をイオン化する。イオンは水蒸気を集めやすいため、それが基となって雲の量が増える。
過去に大量の宇宙線が地球に降り注いだ時、雲ができて太陽光がさえぎられ、気温が下がり、氷河期につながったのではないかという説もある。
実際、黒点が70年間にわたってほとんど現れなかったマウンダー極小期(1645〜1715年)には地球が寒冷していたことが観測されている。
太陽観測衛星
2011年現在、STEREO、SOHO、ひので、SDOなど6機の人工衛星が太陽の観測をしている。学術的な観測の他、地上の電気設備や宇宙ステーション、人工衛星などへの太陽風の影響を調べる宇宙天気予報のためにも使われている。
- STEREOはNASAの人工衛星で、太陽を立体的に調査(主にコロナガスの噴出について)するために2機の人工衛星が離れながら太陽を周回している。
- SOHOはESA(ヨーロッパ宇宙機関)とNASA(アメリカ航空宇宙局)が共同で打ち上げた人工衛星。太陽風などの様子を観測している。
- ひので(SOLAR-B)は日本がNASA、イギリスのPPARCと共同開発して打ち上げた人工衛星。
参考資料
- 誠文堂新光社・天文年鑑2010年版
- ニュートンプレス・Newton2011年10月号「太陽 地球コネクション」
- NASAのSOHOのサイト
- BS朝日・ザ・ユニバース 宇宙の歴史「太陽の秘密」
- NHK BSプレミアム・コズミックフロント「迫りくる太陽の異変」2011年6月7日放送
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