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2024年4月18日木曜日

2024/4/18 アンビリバボーのUFO呼び企画を検証

番組より
左から前田、岡本、小林の3氏
4月10日夜に放送されたフジテレビ系、奇跡体験アンビリバボーにおいて、特殊能力者3人がUFOを呼ぶという企画が放送された。これにかつて福岡県の地方局FBS「発見らくちゃく」においてインチキUFO呼びをしていた自称霊能力者・岡本雅之氏が久しぶりにテレビ出演していたので、UFO事件簿としては今回もしつこく検証する。

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番組概要

番組は3時間スペシャルの冒頭のコーナー。UFOネタは他にもあったが、UFO呼び企画だけ取り上げることとする。
後述するが、ロケ日は3月2日土曜日と推測される。
以下の3名が遠く離れたそれぞれの場所で同時にUFOを呼び、それを後日、元JAXA(宇宙航空研究開発機構)職員だという中沢孝氏から意見を聞くというもの。
  • 福岡県久留米市の岡本雅之氏
    • 霊能力者を自称し、普段は霊感商法のような事をしている
    • 福岡県FBSの「発見らくちゃく」という番組とグルになりUFO呼びをしたが、その全てが付近を飛ぶ飛行機、土星や火星などの天体などとバレている
    • 最近は「5代前の前世が宇宙連合の総司令官だったから、その能力でUFOを自在に呼べる」という設定を始めた
    • UFO呼びの呪文がキスカンに聞こえる(実際は違うらしいが)
  • “UFOおじさん”前田末和氏
    • 石垣島在住で、2016年に撮影されたUFOを呼んだという(海保の照明弾と判明済み)
    • 19年前の夏、深夜に上空に向けて懐中電灯を点滅させたところ、上空からも合図を返してきたことをきっかけに、UFOとコンタクトできるようになったという
  • シンガーソングライターの小林清美氏
    • 子供の頃から何度も危険を回避する経験をしていたが、成人後にUFOで迎えに来た自分担当の2人の係員(宇宙人)と触れ合った時に頭が爆発する感覚を覚え、会話をせずとも、危機を救ってくれていたのがUFOに乗る宇宙人だったと気付いたという
  • 元JAXAの中沢孝氏
    • 元JAXAは間違いないようだが、広報、宇宙食開発、ロケットなどへの搭載機器開発がメインのようで、夜空の観測、UFO真贋判定のスキルについては不明である
    • 現場には行っておらず、映像だけ見せられた模様
以下、順を追ってツッコミを入れていこう。

東京タワーのUFO写真

小林清美氏が撮影した東京タワーのUFO写真
補助線はUFO事件簿
小林清美氏が東京タワーを撮影した写真の横に円盤状の光体が写っているのだが、ただの街灯のレンズゴーストだ。
レンズゴーストは強い光源にカメラを向けると、光がレンズ内で反射してできる虚像だ。画面中心を挟んだ対称位置に出ることがほとんどなので、上記画像のように対角線を引き、ほぼ中心を通るような線を引くとわかりやすい。カメラの手ぶれ補正機能が効いているとゴーストの方が大きく動くため中心からずれることもある。
スマホで生じやすいので、誰でも簡単に再現することができる。

石垣島のUFO写真

UFOおじさんが呼んだというUFO写真(部分)
沖縄タイムスより
2016年9月29日午後7時40分頃、沖縄県石垣島久宇良集落で撮影された写真。前田末和氏のUFO呼び最中に現れ、通りがかった男性が撮影した光体群。
NHKBSプレミアムの「幻解!超常ファイル」FILE-20(2017年3月25日放送)において、海上保安庁の訓練に使われた照明弾であることが確認されている。

岡本氏撮影のUFO

4年ほど前、自宅前で撮影したという
どこをどう写したのか情報がないが、左側に飛行機雲らしいものも見えることから、航空機の可能性が高いだろう。3機と言うがただの3つのライトだと思われる。
以前ツイッターやFacebookに盛んに上げていたのを何度も見たが、これと同様に何をどう写したのかよくわからないようなものをUFOだと言い張っているものばかりだった。

山梨県、UFO呼び開始前のUFO

山梨県山梨市の「ほったらかし温泉」の露天風呂脇でスタッフともども準備中の小林氏が騒ぎ出し、夜空にカメラを向けさせる。時刻は不明だが、UFO呼びする3者顔合わせの午後7時時40分より前とのこと。
オリオン座のベテルギウスの下を左に動く小さな光体が写り、これをUFOだと言って大喜びし、何を根拠にか「人工衛星ではない」と言う。

中沢氏も「動きから人工衛星ではなく、速い回転をしているから飛行機でもなく、想像がつかない」と言う。しかしこれも何をもって人工衛星と違うのか、速い回転をしているというのかが説明されなかった。
筆者がオリオン座の三つ星を基準に映像をスタビライズしたもの

オリオン座から離れてしばらくすると画面左下の方にわずかに曲がったように見えたが、映像を精査したところカメラが回転していたためで、実際は真っ直ぐ動いていた。スターリンク衛星をはじめ、無数の人工衛星が飛び交っているので、そのうちの明るいものがたまたま見えたのだろう。日没後90分間は太陽光を反射しやすいため、人工衛星が見やすい時間帯だ。
そもそもUFO呼びをする前なのだから、ひいき目に言っても偶然見えた光の点でしかないだろう。

UFO呼び本番

7時50分からUFO呼びが開始され、3者それぞれの方法でUFOを呼ぶ。石垣島だけは厚い雲に覆われ、小雨が降り出している。
8時1分、山梨の小林清美氏、4機の飛行機らしき点滅する光体が見える中の1機がUFOっぽいと言うが、映像にうまく撮られないまま雲の中に。まあただの飛行機でしょう

一瞬映っていた2個の光点
福岡県、岡本氏の娘の友達のインタビュー中に撮っていた夜空に一瞬2個の光点が写っていて、それが怪しい物体だという。
しかしこれはカメラのノイズだろう。たまたま2個近い場所に出たので怪しく写ったというだけで、他にもこれくらいのノイズは画面いっぱいに写っている。

福岡、山の上の光体

8時18分に山の上に怪しげな光体が現れたというのだが、岡本氏の娘の友人が見つけたもので、点滅もあるから飛行機だろう。
岡本氏、元司令官で予約もしていると言いながら、毎回自分ではどこに現れるのかわかっておらず、他人に教えてもらうことが多い。インチキなんだから当然だが。
付近を飛ぶ飛行機はなかったというのだが、証拠となるflightradar24の画面は映されない。そもそもこうしたトラッキングアプリは全ての航空機が表示されるわけではないし(位置情報の信号を出している機体だけ)、条件が良ければ100kmくらい遠方のものも見えるので、周囲の航空機だけ調べてもダメだ。

福岡県の猛スピードUFO?

8時25分に福岡県で「決定的な瞬間」がおとずれ、高速で動くUFOが写ったという。中央の明るい星(木星と判明)の上を左上にツーっと動いていく光の点。

中沢氏は「インパクトは一番強いかも。明らかにすごい勢いで動いてるし、自然界にはない動き。肉眼で見たらもっと激しく動いている」と言う。
円内が高速で動くUFOだというが…
番組中で撮影日は明かされていなかったが、周囲の天体と木星の衛星の位置をステラナビゲータで再現してみたところ、3月2日でピタリと一致した。土曜日なので一般人のロケもしやすいだろう。
画面中央の明るい光体は木星だった(テレビの映像にはノイズも多い)
ステラナビゲータの再現と完全一致した
カメラが映していた範囲はおよそこれくらい(赤枠)
見えている星から、カメラがどれくらいの範囲を写していたのかを調べると、上の赤枠くらいの狭い範囲だった。これだけズームアップで写していれば、速いように写ってしまうのも当然だ。そもそもそんなに猛スピードというほどの動きでもなかった。
一コマずつ星の位置を合わせてみた
一見ふらつきながら移動しているようにも見えたが、動画をキャプチャし、恒星を基準に一コマずつUFOの軌跡を合成してみたところ、直線移動しかしていないことがわかった。画面の揺れなどでふらついているように錯覚しただけで、これはただの人工衛星だろう。
ステラナビゲータの再現では、当時上空を通過していたSORCE(SOlar Radiation and Climate Experiment)という人工衛星の軌道に似ていた。断言はできないが、少なくともUFOなんかではない。

結局、今回撮影されたUFOの数として、
  • 山梨県 1機
  • 福岡県 3機
  • 石垣島 0機
と発表されたのだが、全部番組とコンタクティ達の思い込みや、インチキ、「番組として成立させるためにUFOってことにしておこう」ということであることは言うまでもない。

オリオン星雲のUFO

オリオン星雲が日周運動しても静止したままの光体
オリオン星雲と周囲の天体
ステラナビゲータでシミュレーション
コーナーの最後に、夜空に向けておいた固定カメラの映像に、天体が日周運動で動いても静止したままの光体が写っていると紹介された。
しかしこれは番組内でもふれられていた静止衛星だろう。地球の自転に合わせて飛行しているため地上からは静止しているように見え、逆に背後の天体との位置関係は変わっていくのだ。
オリオン星雲付近は静止衛星が帯状に多数存在している
特にオリオン星雲付近は静止衛星が数多くある位置で、天体写真を写してもその光跡が映り込むことがある。
午後8時半頃になると低軌道の人工衛星は地球の影に入って太陽光を反射できなくなるが、静止衛星軌道はかなり遠くにあるため影に入るのが遅くなるし、高感度カメラのおかげで普通ならうっすらとしか写らない人工衛星が比較的明るく写ったものと思われる。
番組では中沢氏の説明として「撮影当時の情報、状況などから絶対に静止衛星であるとも言い切れない」とUFOである可能性を匂わせていたが、何を根拠に? である。

番組総括

当たり前だが今回もUFOなんて来ていないし、呼べるわけもないわけだ。呼ぶのは毎回夜、来たというUFOはどれも遠くで小さく光っているだけで、飛行機か人工衛星と思われるものばかり。
元JAXAの中沢氏もきちんとしたデータと機材を与えられて検証作業をしたのではなく、映像を見せられて感想を述べた程度のようだが、発見らくちゃくの能義氏同様、元JAXAの肩書きで出演しているのだから、安易に「不思議だ」などと言っていい加減なものにお墨付きを与えては良くない。

特に岡本雅之氏は普段から霊感商法まがいの事をしているので、統一教会をはじめとした悪質なカルト宗教ビジネスが問題視されている昨今、とても地上波テレビに出演させて、UFO呼びが一応でもうまくいったような放送をしていいような人物じゃないはずだ。番組とフジテレビのコンプライアンス意識を大いに疑う
岡本氏も、ほんっっっとにやめないと今後良くないことになるよ? 娘さんやその友達なんかを巻き込むのもおやめなさい。

視聴者によるSNSの実況書き込みが批判的なものがほとんどだったのが救いだった。
「ひとつとして鮮明なものがない」
「100%呼べるなら白昼堂々呼べ。なんでいつも夜?」
「いい加減目の前にUFOを呼んで宇宙人を出してみせろ」
「用もなく何万光年も先からUFOを呼びつけたら宇宙人も怒るんじゃないか?」

求められるUFO

UFOを本当に呼べると言うなら、真っ昼間に都会の真ん中にドーンと、明らかに地球の乗り物じゃないものを出現させて欲しい。これならさすがに筆者も認めよう。
しかし飛行機だか鳥だかわかんないものを、遠くに一瞬だけ見せるようなのはもう結構です。いりません。飽きた。

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