1964年4月24日/アメリカ/ニューメキシコ州ソコロ
Socorro, NewMexico, USA概要
事件の再現イメージ ただしここにあるようなハッチやラダー(はしご)のようなものは目撃されていない。 contatoalienigena.blogspot.jpより |
詳細
スピード違反の車を追うザモラ巡査
その日は空にわずかな雲があるだけの晴れた日で、時折強い風が吹いていた。
夕方5時45分頃、ソコロ警察署の2台のパトカーがスピード違反車の追跡を始めた。
そのうちの1台に乗っていたのはロニー・ザモラ(Lonnie Zamora)巡査だった。
目撃者のロニー・ザモラ巡査
プロジェクトブルーブックより
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パーク・ストリートを高速で南に走る違反車の黒のシボレー。
(乗っていたのはFloyd Reynold氏の子供Vivian(17)だったかもしれないという)
違反車はパトカーから3ブロックほど先を走りながら、町外れをなおも逃げる。追跡を続けたのはザモラ巡査だけであった。
ザモラ巡査、轟音と炎を目撃する
その時であった。ザモラは背後に大きな音を聞き、0.5〜1マイル(800m〜1.6km)ほど離れた南西の空に炎を確認した。そちらの方角にあるダイナマイト小屋が爆破されたと思った彼は、違反車の追跡をやめてそちらに向かうことにした。
ザモラは運転中なのであまりしっかりと観察することはできなかったが、炎の特徴はだいたい以下のようなものだった。
- 青みがかったオレンジ色(ただし、ザモラはメガネの上に緑色のサングラスをかけて見ていた)
- 大きさはよくわからない
- 動きはなく、ゆっくりと下降してきていた
- 炎の上の方が細くなった、細い漏斗のような形
- 炎の底部は上部の約2倍の幅
- 高さは上部の幅の4倍ほど
- 炎の上部に何かの物体があるかどうかは気づかなかった
- 煙は見られない
炎の底の方は丘の陰になっていて見えなかったが轟音が聞こえる。それは爆発するような音ではなく、ジェット噴射のような音だった。
ザモラは荒れ地の砂利道を、音の方に向かって車を走らせていた。すべる道にタイヤを取られ、二度目でようやく丘に登ることができた。60フィート(18m)ほどの長さの丘はかなり険しい。
轟音が続く間、炎が見えている。
10秒ほど続いた轟音は、だんだんと音が低くなって止まった。
丘の上から今度は西に向かって砂利道をゆっくりと下る。ダイナマイト小屋がよくわからず、20秒ほど探していた。
奇妙な物体と2人の人物を目撃
その時150〜200ヤード(137〜182m、800フィート(240m)との資料も)ほど南にある、光沢のある物体に気づいた。その物体は道から離れたところにあり、動いていないようだった。ザモラは一瞬車を止めて観察した。
それは楕円形をしており、アルミニウムのように白く見え、逆さになった車のようにも見えた。
ザモラによるUFOのスケッチ 240m遠方から楕円形のUFOを側面から見る形 プロジェクトブルーブックより |
物体の近くには白いつなぎを着た小柄な2人の人物がいた。ザモラは、事故を起こした車に乗っていた子供達ではないかと思った。白いつなぎの小柄な人物(小柄な大人か、大柄な子供)ということ以外、特に奇妙な様子には見えなかった。
そのうちの一人がザモラの車の方に振り返りびっくりしていたように見えた。
ザモラが二人を見たのはこの一瞬だけだった。
ザモラは彼らを救助しようと思い、車を急がせた。
UFOの側面に近づく
物体の側面が見える位置に着いた。「事故の可能性があるので、車から下りて物体を調べる」ソコロの保安官事務所に無線でそう伝えると、ザモラは車を降りた。この時は無線連絡に気を取られ、あまり物体の方に注意を向けていなかった。
物体に向かい、干上がった川の荒れ地を歩く。
物体までは100フィート(30m)ほどである。
ザモラによるUFOのスケッチ 30m程度まで近づいてから見えた形態とマーク プロジェクトブルーブックより |
物体の真ん中には何かの赤いマークがあった。マークは高さ2.25インチ、幅2インチ程度だった。
ザモラによるUFOのスケッチ UFOについたマーク プロジェクトブルーブックより |
再びの轟音に逃げるザモラ
その時物体の付近で、ドアを開け閉めするようなバタン! という音が1秒程度置いて2〜3回聞こえた。すると再びものすごい轟音が聞こえだした。爆発音ではなく、ジェットのようなものでもなかった。音は低い音から高い音に変化し、さらにすごい音になった。
それと同時に物体の下から炎が吹き出した。色は薄い青で、下の方はオレンジ色っぽかった。
物体底部の中央付近から出ているようで、それが舞い上げるほこり以外には煙は出ていなかった。
轟音が始まってすぐにはまだ地面の上に少し浮いた程度だった。
ザモラは爆発を恐れて逃げ出したが、車の後部に足をぶつけ、眼鏡とサングラスを落としてしまった。
飛び去るUFO
眼鏡を落とした後、物体との間に車を挟んで北に走り続けた。何度か背後を振り返って確認した。物体は20〜25フィート(約6〜7.6m)を6秒ほどで上昇した。
ザモラは走りながら丘の頂を飛び越え、さらに斜面を下ると、物体に振り返り、地面に伏せて顔を腕で覆った。
じきに轟音はやんだが、その際に高音から低音に変化するキンキンとした鋭い音が2回聞こえた。
辺りが静まり返ったので顔を上げると、物体が南西方向に離れていくところだった。
地面から10〜15フィート(3〜4.6m)、高さが8フィート(2.4m)ほどのダイナマイト小屋の屋根から3フィート(0.9m)ばかり上を非常に速く移動していた。
ザモラはそれを観察しながら車に戻り、眼鏡を拾い上げた(サングラスは地面に残したまま)。
無線で連絡する
ザモラは車に乗り込むと署に無線で連絡し、オペレーターのロペスに「窓の外の物体を見てくれ!」と訴える。「それはどんなものか?」と尋ねるロペスに「気球のようなものだ」と伝える。しかしロペスのオフィスは窓が北向きだったら見られなかった。ザモラは無線で話しながら、非常に速く遠ざかっていく物体を観察した。物体は山を越えて見えなくなった。炎も煙も音も臭いもなかった。
車から出てから、もう一度車に乗り、物体が見えなくなるまで、20秒くらいだったと思われる。(そんな短いの? 要確認)
当時ザモラの健康状態は良く、最後にお酒(数杯のビール)を飲んだのも一ヶ月以上前だった。幻覚などは考えにくい。
チェイベス巡査部長 プロジェクトブルーブックより |
物体の着陸地点にある低い木々が燃えていたことに気づいた。
UFOの炎による焼け跡 プロジェクトブルーブックより |
ザモラはチェイベス巡査部長に燃えている木々を見せながら、「私は一体何を見たんでしょう?」と聞き返した。
現場に着陸脚の痕跡を発見
チェイベス巡査部長は物体の着陸地点の地面に、物体の着陸によってついたと思われるくぼみを発見した。たしかに、最初に物体を目にした時に2本の脚のように見えるものがあったのを思い出した。
脚は物体の底にあり、地面に向かって外側に傾いていた。
その脚のため、物体は地面の上約3.5フィート(1m)の高さにあったと思われる。
UFOの着陸痕のくぼみ 周囲の石は現場保存のために置かれたものという。 プロジェクトブルーブックより |
UFOの着陸痕のくぼみ プロジェクトブルーブックより |
UFOの着陸痕の検証
プロジェクトブルーブックより
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他の目撃者?
その後、ザモラが最初に見た青い光を同じ頃、同じ地域で見たという報告が3件ソコロ警察署に寄せられた。(詳細な資料は要確認)
ザモラ巡査の走行経路と現場周辺地図
より大きな地図で UFO事件マップ を表示
現場解説図 地図上部が南になるので、グーグルマップとは逆さになる。 プロジェクトブルーブックより |
考察
空軍のUFO調査機関「プロジェクト・ブルーブック」の調査では、何かの誤認でない事態が起こっていたとし、事件を「未解決」とされた。それまではUFOの事件に否定的だった天文学者アレン・ハイネック博士も、この事件を機に「単なる誤認だけではない」と考えるようになった。
ザモラのスケッチで、遠距離と近距離でのUFOの見え方が変わっている点がおかしいという指摘がある。
プロジェクトブルーブックの現場解説図を見ると、楕円のUFOの側面を遠くから目撃したのと、正面近くから目撃したのだから、証言どおりの見え方でも矛盾はないと思う。
UFOは月着陸船?
当初、アポロ計画で使われる月着陸船のテストを見間違えたのではないかという説が疑われた。
これに関してはその後否定されたのだが、詳しくは後日調べて追記する。
UFOは気球?
インターナショナルペーパー社のロゴ |
機体についていたマークが当時気球を製造していたインターナショナルペーパー社のマークにそっくりなのだという。吹き出した炎というのも、熱気球を上昇させるためのバーナーの炎であるという見方もできる。
つまり気球に乗った人が、何かの必要があってソコロのはずれに着陸。それをザモラが目撃したというのだ。
当のインターナショナルペーパー社と思われる会社のWebサイトがあった。気球専門メーカーでなく、日本を含む世界各地に支社を持つ製紙業界の世界的企業のようである。
今のところ気球製造についての記述は見つからなかったが、大企業だけにいろいろな事業をしていたことも考えられる。
木をモチーフにしたのであろう上向きの矢印のようなそのロゴマークは、たしかにザモラ証言のマークに似ている。
しかしいくら夕闇が迫っていた薄暗い状況だったとはいえ、気球とUFOを間違うだろうか? もちろん気球の形は作り方次第でどうにでもなるため、今回のUFOに似た形の気球(飛行船に近いが)が存在してもおかしいものではない。
ただし、気球のバーナーであれば、通常地面がこげることは考えられない。
もし気球であれば、事件後40年もたっているのだから、よほどのことがない限りは「実は私たちが乗った気球でした」という証言があってもいいと思うのだが。
ただし、大騒ぎになったために名乗り出られなくなったこともあり得ることではある。
学生のいたずら?
UFO研究家のアンソニー・ブラガリア(Anthony Bragalia)が2009年9月23日に書いたブログによると、事件はニューメキシコ工科大学(NMIT)の学生達によるいたずらだったというのだ。
当時、事件に関心を持ったノーベル化学賞受賞者でもある科学者のライナス・ポーリング(Linus Pauling)が、友人でニューメキシコ工科大学(NMIT)の学長でもある物理学者のスターリング・コルゲート(Stirling Colgate)博士に聞いたところ、同大学の信頼筋からの情報により、学生達3〜6人程度によるいたずらだったという返事が返ってきたという。
学生一人がわざとスピード違反を犯してザモラ巡査に追跡させ、別の学生達が現場で花火を使ってザモラ巡査におびきよせる。白い服を着た宇宙人役の小柄な二人が孔明灯/チャイニーズランタンなどと呼ばれる小柄な熱気球でUFOが飛んで行くのを演出した。大騒ぎになったために告白できなかった。
…というのである。
証言がどこまで真実かはわからないが、こんな手の込んだことをして警察をだます理由がわからない。
いたずらに理由なんかないと言われればそれまでだが、
- スピード違反車を警官が見つけて追いかける
- 花火の音に気づき違反車の追跡をやめ、そちらに向かう
- UFOに似せた熱気球を見破られない
- 気球を飛ばした後の宇宙人役の二人が荒地から無事逃げられる
など、いくつかの偶然が重ならないとうまくはいくまい。
「コルゲート博士が誰かからそう聞いた、とポーリング博士が聞いた」という、又聞き状態であり、証拠能力としてはかなり弱い。
よく調べる必要はあるが、これだけの情報ではどうも眉唾めいた説と思う。
当のブラガリアのブログは、もう削除もしくは移転したらしく見つからなかった。
野生馬を捕らえる作業をしていたガレゴスは、ラ・マデラ北部にある父親の家の近くで、約200フィート(約60m)先の砂地に浮かぶ楕円形の奇妙な物体を見つけた。
UFOの長さは電柱ほど、直径は14フィート(約4m)ほどで、物体の底の方から青い炎のリングが噴出していた。
家族が出てきて物体に近づいて観察しようとしたが、彼は怖がって一緒に行くことを拒んだため、家族も近づかなかった。
翌朝、州警察とともに着陸場所を調べると、岩が割れ、付近の瓶が溶けているのを発見した。
他にも、マウンテンライオンに似た4つの窪みや、奇妙な足跡を発見した。
それによると、現場付近はゴミ捨て場になっており、ゴミが燃えたのを見間違えたのだろうということであった。
目撃当時のガレゴスはひどく酒に酔っていたという。
——マウンテンライオンに似た窪みや足跡というのはどんなものかわからないが、それがUFOによってできた証拠はない。
現場で浮いているように見えたというだけで、飛行しているところを見たわけでなし、まして宇宙人のようなものも目撃されていないわけである。
ソコロ事件の2日後とはいえ、300km弱離れた場所で炎が見えただけということであれば、二つの目撃を結びつけるのは無理がある。
おそらくはザモラの事件を聞き、酒のせいもあってUFOだと思い込んでしまったのだろう。
この事件はソコロ事件の信憑性を裏付ける事件として一緒に語られることが多いが、ちゃんと調べてみれば、なんてことはないものであった。
詳細未確認情報
- 当時地元警察と大学に通うエリートの間で対立があり、ザモラ達はからかわれることがあった。
- コルゲート博士は観測気球を上げて雲を調べる研究をしており、その写真もある。
二日後に似たような目撃?
また2日後の26日午前0時半頃、ソコロの300km北のラ・マデラ(La Medera)において、オーランド・ガレゴス(Orlando Gallegos/35)一家によって、ザモラの目撃したUFOと似たUFOが目撃されるという報告があった。野生馬を捕らえる作業をしていたガレゴスは、ラ・マデラ北部にある父親の家の近くで、約200フィート(約60m)先の砂地に浮かぶ楕円形の奇妙な物体を見つけた。
UFOの長さは電柱ほど、直径は14フィート(約4m)ほどで、物体の底の方から青い炎のリングが噴出していた。
家族が出てきて物体に近づいて観察しようとしたが、彼は怖がって一緒に行くことを拒んだため、家族も近づかなかった。
翌朝、州警察とともに着陸場所を調べると、岩が割れ、付近の瓶が溶けているのを発見した。
他にも、マウンテンライオンに似た4つの窪みや、奇妙な足跡を発見した。
ブルーブックの調査
目撃は空軍のプロジェクト・ブルーブックの調査にゆだねられた。それによると、現場付近はゴミ捨て場になっており、ゴミが燃えたのを見間違えたのだろうということであった。
目撃当時のガレゴスはひどく酒に酔っていたという。
——マウンテンライオンに似た窪みや足跡というのはどんなものかわからないが、それがUFOによってできた証拠はない。
現場で浮いているように見えたというだけで、飛行しているところを見たわけでなし、まして宇宙人のようなものも目撃されていないわけである。
ソコロ事件の2日後とはいえ、300km弱離れた場所で炎が見えただけということであれば、二つの目撃を結びつけるのは無理がある。
おそらくはザモラの事件を聞き、酒のせいもあってUFOだと思い込んでしまったのだろう。
この事件はソコロ事件の信憑性を裏付ける事件として一緒に語られることが多いが、ちゃんと調べてみれば、なんてことはないものであった。
参考資料
- 学研・世界UFO大百科復刻版(ムー特別編集)
- 並木書房・政府ファイルUFO全事件(ピーター・ブルックスミス(大倉順二訳))
- 楽工社・新・トンデモ超常現象60の真相(皆神龍太郎、志水一夫、加門正一)
- YourCreatedCosmos(正式なサイト名は不明です)
- YouTubeの再現映像1、2
- プロジェクト・ブルー・ブック(本文)
- プロジェクト・ブルー・ブック(写真)
- ほんとにあった(と思う)怖い話(学生のいたずら説について)
- Bad UFOs: Skepticism, UFOs, and The Universe(学生のいたずら説について)
- プロジェクト・ブルー・ブック(オーランド・ガレゴスの目撃)
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