U.K.
概要
イギリスで放送されたテレビ番組。
優秀な科学者が他国に出て行ってしまう問題を取材中の取材班は、米ソの間で秘かに進められる火星移住計画があることに気づく。
宇宙開発をめぐる大国の陰謀論というものを煽ることとなった問題作。
イギリスのアングリアテレビが制作した「サイエンス・レポート」というドキュメンタリー番組がある。
優秀な科学者がイギリスから他国に出て行ってしまう「頭脳流出」問題を取材していた取材班は、その調査過程において、出国したまま失踪してしまった人達がいることに気がつく。中には出国先での近況を伝える写真と手紙を家族宛に送ってきた者もいたが、現地の住所を訪ねるとそんな人物は住んでいなかった。
詳細
頭脳流出問題
番組進行役のティム・ブリントン 番組より |
優秀な科学者がイギリスから他国に出て行ってしまう「頭脳流出」問題を取材していた取材班は、その調査過程において、出国したまま失踪してしまった人達がいることに気がつく。中には出国先での近況を伝える写真と手紙を家族宛に送ってきた者もいたが、現地の住所を訪ねるとそんな人物は住んでいなかった。
バランタイン博士の死と、謎の男ハリー
密告者ハリー(右) |
ジョドレルバンク天文台の電波天文学者のバランタイン博士が事故死を遂げる。事故の前日、旧友である新聞編集者に謎のビデオテープを送っていたが、何も写ってはいなかった。
取材班に、事故の数週間前にNASAで博士と会っていたという男ハリーが接触してきた。
取材班に、事故の数週間前にNASAで博士と会っていたという男ハリーが接触してきた。
翌日指定された家に行ってみると、ハリーは錯乱して怯えきっており、何も聞き出すことはできなかった。直後にハリーは恋人とともに姿を消す。
地球温暖化問題の選択肢
ケンブリッジ大学のカール・ガーシュタイン博士は、かねてより地球温暖化を警告していた。1957年のハンツビルの会議の秘密討論により、三つの解決策が検討されたが、第1、第2の選択は論外で、現実的な案は第3の選択(オルターナティブ3)しかなかったという。その内容について博士は口をつぐんだ。元宇宙飛行士ボブ・グローディン |
ボブの自宅でのインタビューにおいては、後期のアポロ計画は月面での活動の存在を隠すためだけであったこと、そして、バランタイン博士がハリーの手助けでジュークボックスと呼ばれる暗号解読機を通してビデオテープを再生し、ひどく興奮していたことを語った。
米ソの間の秘密協定が疑われる中、ガーシュタイン博士はとうとう第3の選択の内容を明らかにする。それは環境の悪化によって住めなくなる地球を捨て、人類の選ばれた一部だけでも火星で生き延びさせるという驚くべき内容であった。
(ちなみに第1は核兵器で大気の層に穴をあけ熱を逃がす。第2は選ばれし人々のみ、地下に生活基盤を移す。)
ハリーの恋人から連絡が入り、ジュークボックスを入手した取材班。映し出されたビデオテープには、人類初の火星無人探査機による地表の映像と、モグラのように地中をうごめく生物が写っていた。
「1962年5月22日、火星に到着、生物を発見!」歓声を上げる米ソの宇宙技術者達。
「内容に衝撃を受けた方も多いかも知れません。しかし私たちは義務として、知り得た事実をそのまま伝えました。皆様の反応をお待ちしています」進行役のティム・ブリントンがそう語って番組は終わる。
日本版は、現在は韮澤さんが社長を務めるたま出版から出版された。
この番組はエイプリルフールの冗談番組として作られたようである。放送は6月20日と後日になったが、制作日として4月1日とエンドクレジットが入っている。
衝撃の火星映像
米ソの秘密の探査船が火星に到着し、地下を動く生物を発見!? |
「1962年5月22日、火星に到着、生物を発見!」歓声を上げる米ソの宇宙技術者達。
「内容に衝撃を受けた方も多いかも知れません。しかし私たちは義務として、知り得た事実をそのまま伝えました。皆様の反応をお待ちしています」進行役のティム・ブリントンがそう語って番組は終わる。
放映後に出版された本
その後、この番組の詳細と、放送後にわかったことについて記述した本が出版された。それには次々と優秀な人材達と、精神、肉体改造され、作業用の奴隷にされた“一括託送貨物”と呼ばれる人々が月面基地に送られていること、計画を邪魔する者への懲罰的殺人、月面基地での反乱、米ソ秘密会議の内容を暴露する謎の密告者トロイア人などのことが書かれていた。日本版は、現在は韮澤さんが社長を務めるたま出版から出版された。
考察
1977年4月1日制作 |
出演者の配役 |
ハリー役のDavid Baxtは映画シャイニングでは無線通信者役で出ているし、 ハリーの恋人役のPhoebe Nichollsは映画エレファントマンで主人公メリックの母親役で登場している |
出演者も全て俳優で、これもエンドクレジットで明らかにされている。
例えばボブ・グローディンなる元宇宙飛行士も実在しない(アポロ計画後に精神を病んだオルドリン飛行士がモデルではないかとも言われているが)。
番組制作者のクリストファー・マイルズもあまりの反響に驚いて、番組がフィクションであったという声明文を出している。
番組制作者のクリストファー・マイルズもあまりの反響に驚いて、番組がフィクションであったという声明文を出している。
本の方も本物の新聞資料を引用するなどかなり凝った作りになっているが、原著では裏表紙の分類の項に、初版では「ワールドアフェアーズ/スペキュレーション(国際問題の推測)」、第二版では「フィクション」と記されている。
第1、第2の選択も、国際会議で検討された内容としては稚拙すぎる。
それでもあまりに衝撃的な内容であったため、米ソの陰謀説というものを流布させるのに十分な効果を発揮してしまった。
ただし一説には、内容は事実なのだが、事実として放送すると衝撃が大きすぎるため、冗談番組を装って脚色して作られたのではないか、もしくは冗談番組として作ったものが偶然に真実に迫ってしまったのではないかとも疑われている。
実はそれに先立ちフジテレビが1978年(昭和53年)4月6日午後11時55分から放送し、録画した人もいるのだが、「第3の選択」の放送記録が見つからないというミステリーがあった。
しかしこれは番組名が『地球滅亡の危機!「ロンドンTVパニック」』だったからで、「サイエンス・レポート」や「第3の選択」でいくら探しても見つかるわけがないというオチだったようだ。新聞のテレビ欄を調べれば簡単なトリックだ。
この件についてはこちらにもまとめた→ UFO事件簿/第3の選択の放送記録の問題について
H.G.ウェルズの「火星人襲来」ラジオ放送の例があるとおり、欧米においては、日本では信じられないようなきついジョーク、悪ふざけをすることがあるので、これもその類いであると筆者は考える。
第1、第2の選択も、国際会議で検討された内容としては稚拙すぎる。
それでもあまりに衝撃的な内容であったため、米ソの陰謀説というものを流布させるのに十分な効果を発揮してしまった。
ただし一説には、内容は事実なのだが、事実として放送すると衝撃が大きすぎるため、冗談番組を装って脚色して作られたのではないか、もしくは冗談番組として作ったものが偶然に真実に迫ってしまったのではないかとも疑われている。
日本での紹介
1982年(昭和57年)1月21日 朝日新聞朝刊 |
日本でも矢追さんが、1982年(昭和57年)1月21日に日本テレビの木曜スペシャルで取り上げて話題になる。
1978年(昭和53年)4月6日 朝日新聞朝刊 |
しかしこれは番組名が『地球滅亡の危機!「ロンドンTVパニック」』だったからで、「サイエンス・レポート」や「第3の選択」でいくら探しても見つかるわけがないというオチだったようだ。新聞のテレビ欄を調べれば簡単なトリックだ。
この件についてはこちらにもまとめた→ UFO事件簿/第3の選択の放送記録の問題について
H.G.ウェルズの「火星人襲来」ラジオ放送の例があるとおり、欧米においては、日本では信じられないようなきついジョーク、悪ふざけをすることがあるので、これもその類いであると筆者は考える。
音楽
番組のエンディングテーマには、アンビエント・ミュージックのブライアン・イーノが起用されている。不安感があってかっこいい。
ちなみに、マイクロソフトのWindows95の起動音を作曲したのもこの人だ。
ちなみに、マイクロソフトのWindows95の起動音を作曲したのもこの人だ。
参考資料
- クラウンレコード・第3の選択(ビデオ)
- たま出版・第3の選択・米ソ宇宙開発の陰謀(レスリー・ワトキンズ、ディビッド・アンブローズ、クリストファー・マイルズ著、梶野修平訳)
- 宝島社・トンデモ超常現象99の謎(と学会・山本弘、皆神龍太郎、志水一夫)
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