1977年に観測され、地球外知的生命体からの信号を受信したものではないかと言われていた通称Wow! Signal(ワウ・シグナル)が、実は彗星もしくはそれを包んでいる水素雲から発せられた可能性が高いことがわかった。
惑星科学センターはこの仮説の検証のために、発信源を疑われていた彗星266 / P Christensen(公転周期6.64年)が戻って来た2016年11月末から2017年2月末にかけて200回観測し、同彗星が1420.25MHzの信号を放射したことを発見した。同彗星は1977年当時未発見であった。
観測中、付近に1420MHzを発する既知の天体はなく、電波望遠鏡を同彗星から1度ずらしたところ信号が消え、戻したところ再び信号が現れた。
別な3つの彗星でも試したところ、同じように1420MHzの信号を検出したため、Wow! Signalも太陽系の天体起源の自然現象であったと結論づけた。
論文はワシントン・アカデミー・オブ・サイエンス (第103巻、第2号、2017年夏)に掲載されている。
もう一つの候補である彗星355P/2008 Y2(Gibbs)についても、2018年に観測予定のようである。
この結果に異論を持つ学者もいるようである。今後の動向を見守りたい。
|
1977年8月15日の空をシミュレート
Wow! Signalが観測されたのは、いて座の領域 |
Wow! Signalは、1977年8月15日にアメリカ オハイオ州立大学の電波望遠鏡ビッグイヤーにて地球外知的生命体からの信号を探していたところ、通常の天体から発せられた電波やノイズとは思われない特殊な電波を検出したため、観測者が驚いて観測結果の印刷に「Wow!」と記したことからそう呼ばれる。
|
英数字は電波の強さを示しており、赤で囲まれた6EQUJ5がWow! Signal |
研究者達は水素原子の周波数である1420MHzの電波を狙って観測していた。この周波数は天体観測で最も使われるもので、科学力のある異星人であればこの周波数でメッセージを送ってくるだろうと考えてのことだ。
向きの固定された電波望遠鏡によって観測しており、地球の自転速度に合わせて信号が検出されたため、地球由来のノイズではなく天体由来である根拠になっていた。
その後何度も同じ方角を観測したが、再びその信号が検出されることはなかった。
——これまで唯一異星人からのメッセージっぽかったWow! Signalが候補から外れてしまった。
何がいけないのか、なかなか地球外からの人工的な電波は観測できない。地球外知的生命体は非常に稀にしか存在しないのか、互いの文明の時間的な重なりがないのか、それとも地球人の想像外の方法で通信しているのか。
4月1日付の記事だし、日本での情報も少ないのがちょっと心配だが(苦笑)、今後もっと情報精度が上がれば、テレビの科学番組などでも紹介されることと思う。
参考資料
- NHK BSプレミアム「コズミックフロントNEXT 宇宙人からのメッセージ!? 謎の電波に迫る」2017年4月13日放送
- アストロアーツ、ステラナビゲータ10
- 誠文堂新光社、天文年鑑2017