2018年12月31日月曜日

謎の筆跡光写真

1966年12月13日
アメリカ/マサチューセッツ州ケンブリッジ
Cambridge, Massachusetts, USA

概要

A.P.R.O. BULLETIN(APRO会報)より
自宅で流星群を撮影したところ、気づかないうちに奇妙な光の筋が写っていた。これはUFOが飛行した軌跡なのか!?
こうした空に描いたような光の筋は筆跡光(Writing light)と呼ばれる。


詳細

左が撮影者のジョン・ホフ
スカイスクレイパーズより
撮影者はジョン・T・ホフ(John. T. Hopf)。アマチュア天文家で、民間のUFO研究団体APRO(空中現象調査機構)の写真分析専門家でもあった。1920年生〜2011年没。
アマチュア天文家としては名の知れた存在なのだろう、スカイスクレイパーズというアマチュア天文家の非営利企業のサイトに紹介ページが設けられている。
撮影状況などは初出であろうAPROの会報に載っている。

APROの会報の記事

日付:1966年12月13日
所在地:マサチューセッツ州ケンブリッジ
時間:真夜中から午前4時まで
要約:写真編集者、Sky&Telescope Cambridge、
拝啓
12月13日真夜中から午後4時までの間、ふたご座流星群を撮影するために自宅屋上の天文台に4台のカメラを設置しました。すべて120サイズのロールフィルム(2¼ × 3¼インチサイズ)を使用しました。
この間撮影できたのはたった3つの流星でしたが、コダック社メダリスト(=カメラ名)のうちの一つ(f3.5、焦点距離4インチ(=約102mm)(レンズ絞り開放))は、その間に囲まれた異常な軌跡を記録しました。
およそ3時から3時10分このカメラは南の45度上を向いていました。木星が右上に写っています。光跡は下からカメラの写野に入っています。
この写真の撮影時、私は他の2つのカメラのフィルムを交換するため南の方には背を向けており、何も見ませんでした。
私はこの光がなぜ私の注意を引かなかったのかわかりませんが、明らかに物体または物体達は無音だったようです。私はこれらの光跡を引き起こしたであろう全ての可能性を確認しましたが、事実に合うものを見つけることができませんでした。
いくつかの光跡が点滅しているので航空機のライトだと思いましたが、過去に同じカメラで撮ったいくつかのネガフィルムを調べるとまったく違う効果を示しています。メインの光跡は木星と同じくらい明るく、良い比較ができます。
私は20年以上にわたって空を観察し写真を撮ってきましたが、これまでにこのようなものを撮影したことはありません。
この件に関するあなたのご意見を歓迎します。
敬具
ジョン・T・ホフ

考察

当時の夜空を再現して比べてみたところ、星の配置は間違いないようだ。木星のあたりにかに座があり、左にしし座が見られる。シミュレーションによれば露光時間は5分程度と思われる。

光跡の形がほぼ同じなので、赤い点で示した位置にある光る物体がほぼ同じ動きをしたことになる。

正体判明

東大UFO研究会の会長でNHKの幻解!超常ファイルにも出演している藤木文彦氏によると、シャッターを開いたままなのに気づかずカメラを動かしてしまい、下に見えていた街灯の光などがブレて写ったものだろうという。筆者もそれに同意見だ。
破線になっている光跡は、蛍光灯のように人の目にわからない周期で明滅している灯りだろう。

木星もブレている

星座線と、長さの違う光跡の共通箇所をマークしてみた
よく見ると木星もぶれて写っているのがわかる。カメラを下に動かしたために上の方に光跡が伸びたのだ。南の空で日周運動を写せば左から右に光跡ができる。その最後の部分がブレているのだから撮影の最後のところでカメラを揺らしてしまったことがわかる。

木星以外の星にぶれた光跡が写っていないのは、木星に比べて他の星がずっと暗いからだ。当時の木星はマイナス2.5等級という非常に明るく見えていたが、他は写野の中で最も明るいしし座のレグルスでさえ1.36等級であった。当時の低い感度のフィルムでは、カメラを速く動かしたなら暗い星の光跡は写りにくかったろう。

他のカメラのフィルムを交換していてぶつかったか、もうシャッターは閉じていると思って動かしてしまったんじゃないかと思う。撮ってすぐに結果が見られるデジカメと違い、フィルムカメラなので現像に出して出来上がるまで数日かかるわけだし、冬の夜中の作業中に何が起きたかなんてほとんど覚えていまい。

光跡の長さが違うのは、カメラの角度によって木の陰に隠れたとかだと推測される。

木星と同じくらいの明るさというが、木星は長時間露光中にゆっくりと日周運動で動いたために太く大きく写ったものだ。単純に下の光跡と明るさの比較をするなら木星のブレた細い光跡と比較すべきだ。つまり木星よりもずっとずっと明るい光なのだ。比較的短時間(1秒程度だろうか?)の間にこれだけ明るく写るのだから、街灯などで間違いない。

子供の頃読んだUFOの本で時々取り上げられていて、気味の悪い写真だと思っていたが、大人になってちゃんと調べてみたらあっという間に解決してしまった。幽霊の正体見たり枯れ尾花である。
ホフ氏はAPROで写真分析を担当していたというが、この程度のものが解明できないのであれば実力が知れる。当然、不思議な写真として発表したAPROも。
内外のまともなUFO研究団体でも検証して、すでに同じ結論にたどり着いているとは思うのだが、寡聞にしてそれを目にする機会がなかった。検索方法が悪いのかネット上でも取り上げているサイトが今のところほとんど見つからなかった。やはりこうした情報は誰でも見られるところに簡単にでもまとめておくべきと考える。

‪UFO‬研究家南山宏さんの本では、撮影地がロードアイランド州ニューポートとなっていたが、実際はマサチューセッツ州ケンブリッジだった。隣の州ではあるが、南北にかなり離れている。

参考資料

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