NASAの火星探査車キュリオシティが撮影した写真に謎の光体が写っており、UFOではないかと言われている。
問題の写真は、地球標準時4月28日(Sol 613)4時48分22秒から58分6秒に、キュリオシティの前面右側のNavigation Cameraで約2分ごとに撮影された6枚。たしかに時間を追ってかなり明るい光体が時間を追って地平線に沈んで行っている。
正体は衛星フォボス
![]() |
ステラナビゲータ13でシミュレーション |
![]() |
Mast Cameraからの写真にもフォボスが写っている |
お二方どうもありがとうございました。
撮影状況の考察
フォボスは公転速度が速く、西の空から昇り東に沈む(太陽は地球と同じように西に沈む)。カメラの向きはシミュレーションのとおり東向きだ。
フォボスの公転の撮影なのでカメラのシャッターは2分間露光。その後一度シャッターを下ろしてから再び2分間露光ということを繰り返している。
カメラと反対方向の西に沈んだ太陽はまだクレーターの山陰に隠れた程度で、地上も暗くなりきっておらず、おそらくそのせいで山の上の方は特に明るく写っている。
背景の無数の白い点は日周運動の光跡を引いていない上、地面の部分にも見られ、さらに後の写真になるにつれて増えているのでノイズだろう。
逆に長時間露光で星らしいものが写っていないのは奇妙に思えるが、かなり明るいであろうフォボスの日周運動を写すため、撮影感度を下げ、絞りをかなり絞ったためだと推測される。画像が小さく見えづらいせいもあるだろう。画像はオリジナルでも横192 × 縦256という小さいサイズだ。
写野の推測
![]() |
シミュレーション画像との位置合わせ |
フォボスが画面下の東に沈むのに対し、アルクトゥールスは東から画面上に上っていくので写野には入ってこない。
シミュレーションはあくまで計算上のものなので実際とは若干誤差があるとは思うが、大筋これであっているだろう。
同様の光跡は5月4日(Sol 619)撮影分にも写っている。
Mast Cameraの写真に他の星が写っていないかシミュレーション画像と比較してみたのだが、星なのかノイズなのか区別がつかず、断念した。
困った人登場
ちなみにこれに関し談話室に、「火星の極秘の軌道エレベーターが写ったものだ!」と強弁する方が現れ、大変に面倒くさい思いをした。
その方は、「カメラに負荷がかかる長時間露光なんてしない」「地表が明るく写っているのはキュリオシティがストロボを焚いたせい」などと、無理矢理なこじつけをしてきたのだが、天体撮影で長時間露光は普通にするし(そもそも今回のもせいぜい一回2分だ)、キュリオシティに遠くまで一様に明るく写せる強力なストロボなんて搭載されていない。
その方は後日自分のサイトに「同時刻にフォボスは全然違う位置にあった」と書いていた。(筆者の記憶が確かであれば、国立天文台が開発したソフトMitakaでシミュレーションしたところ)88分違っていたそうだ。
![]() |
Mitakaでシミュレーション |
念のため筆者もMitakaで再現してみたところ、ステラナビゲータとは計算誤差による若干の位置のずれはあるようだが、同日同時刻のフォボスが再現できた。(Mitakaはデフォルトでは日本標準時のみしか扱えないようなので、世界標準時の撮影時刻に9時間プラスして13時になっている)
この方、日時と場所を正しく合わせたんだろうか? ゲール・クレーターじゃなく火星の適当な場所でシミュレーションしていたら当然結果が異なる。
ちなみにゲール・クレーターの火星での経緯は、南緯5.2度、西経基準の360度で表すと西経222度35分(地球同様に子午線をはさんで東西の経度を分けると東経137.3度)付近となる。
0 件のコメント:
コメントを投稿