Falcon Lake, Manitoba, Canada
概要
火傷を負った被害者のステファン・ミハラク氏 TOP 10 ARCHIVEより |
カナダでは近年になって記念硬貨が発売されるほど。
詳細
5月19日金曜日、マニトバ州のウィニペグ(Winnipeg)に住むアマチュア地質学者で鉱物収集を趣味とするステファン・ミハラク(Stefan Michalak)は、銀の鉱床を探すために130km離れたホワイトシェル州立公園のファルコン湖に向かった。(出身はポーランドだという)(スペルはStephen Michalak、読みはマイカラックとも。スティーブン・ミシャラクと書かれることが多い)
その夜は9時30分にファルコン湖のモーテルにチェックインし、モーテルの飲料室にコーヒーを買いに行ったという。
翌日20日に朝早く目を覚まし、ファルコン湖周辺の茂みでさっそく鉱床探しを始めた。
昼前の11時に昼食を取るべく腰を下ろした。0時15分頃、数羽のガチョウ達が騒ぐ声に驚いた彼が空を見上げると、出っぱりのある葉巻型をした奇妙な物体が2つ、空に浮かんでいることに気づく。
2機のUFOは水平線から15〜20度の高さにあり、一緒に下降してきた。1機は地上3〜4mで停止し、しばらくして色を明るい赤〜オレンジ〜グレーなどと変化させながら西の空に飛び去った。
もう1機は下降を続け、彼から約50メートル離れて着陸した。こちらも色を明るい赤〜オレンジ〜グレーと変化させ、最終的に「金色の光を帯びた、熱したステンレスの瑠璃色」になった。
UFO表面にはマークなどはなく、非常に強い紫色の光がドーム状の部分の隙間から輝いていた。
その後30分ほどの間、彼は少し離れた岩のそばからUFOの様子を観察、スケッチした。
- 直径約10〜12m
- 高さ約2.4m
- 皿形
- 上部のドーム状の部分はさらに90cmほど高かった
- 船内から硫黄の臭いの暖かい空気の波があった
- 空気を吸い込むような、速い電動モーターのような甲高い音がした
ミハラクが目撃中にスケッチしたUFOのイラスト WinnipegFreePressより |
彼がUFOの20m以内に近づいたところ、中から聞き取りづらい人の話し声のような音を聞いた。
この物体をアメリカの試験的な乗り物だと確信した彼は、さらに近づいて皮肉交じりに呼びかけた。
「オーケー、ヤンキー供。トラブってんのか? 出てきて、何か手伝えるか見せてみろよ」
彼は知りうる限りのロシア語、ドイツ語、イタリア語、フランス語、ウクライナ語で語りかけたが返事はなく、声がやんだ。
突然3つのパネルがスライドしてきて、カメラのシャッターのようにハッチをふさいだ。
UFOの壁は厚さ50cmくらいで、蜂の巣か格子のようだった。
熱風で指先が溶けたゴム手袋や下着など inspiegabile.comより |
ミハラク、火傷を負い、体調不良を訴える
ハッチが閉じられた後、彼はゴム手袋越しにUFOに触れてみたが、先端を溶かされてしまった。彼はUFO側面の換気もしくは排気口のそばに立っていたのだが、UFOが急速に左回転を始めると同時にそこから熱い爆風が噴出され、上半身のシャツと下着に火をつけた。彼は倒れて地面に背中を打ち付けながらも、シャツを裂いて地面に投げつけて火を消した。また、彼がかぶっていた帽子の上部前方に焼け穴ができた。
彼は腹部に火傷を負い、UFOから噴射された排気を吸ったために気分が悪かった。
彼はUFOが上昇して行くのを見上げながら、急激な空気の動きを感じた。
UFOはオレンジ色に変わり、知りうる限りの航空機の能力を超えた速度で、やって来た方向に飛び去った。
UFOが去った後、彼は最初にした硫黄の臭いに混じって、電気回路を燃やした時の強い臭いを感じた。
彼は持ち物を置いて来たところまで戻り、方位磁石が不規則に回転しているのを見た。
頭痛と吐き気が強くなるのを感じた。
後年テレビ放送された再現ドラマ付きインタビュー
通りかかった警官に助けを求める
彼は高速道路まで歩き、車で通りかかったロイヤル・カナディアン警察(RCMP/Royal Canadian Mounted Police)の巡査に助けを求めたが、拒否されてしまったという。州立公園の本部でも助けを得られず、一度昨夜泊まったモーテルに戻り、数時間後にウィニペグ行きのバスに乗った。
バスを待つ間、彼はウィニペグ・トリビューン(Winnipeg Tribune/新聞社と思われる)に電話をかけて支援を求めると同時に、この事を公表しないように依頼した。
医師の診察を受ける
彼は息子と会って、医師の診察を受けるために病院に行った。この時、医師に対しては火傷がUFOによるものとは告げず、飛行機の排気によるものだと伝えた。腹部の火傷は表面的なものだと診断されて帰宅したが、吐き気、頭痛、肺からの悪臭、食欲不振、急激な体重減少を訴え続けることとなった。
事件2日後の22日、彼は前年春以来となるホームドクターの往診を受け、翌日病院で放射線障害の検査を受けた。放射線病理学者は火傷の部位、血液、または衣服から、放射線が及ぼす影響の証拠は見つけられず、「火傷は熱による」と報告した。つまり放射線によるものではないということだ。
カナダ警察の捜査
5月24日、ミハラクは事情聴取を受けた。(後と同じRCMPのCJ.デイヴィスによるものと思われる)5月26日、ミハラクはRCMPのCJ.デイヴィスの聴取を受けた。報告書にはミハラクの胸の大きな火傷について書かれている。
事件から1週間後、彼は原子力施設の全身放射計で検査された。この機械は体内の放射性同位体からのガンマ線を検出して測定するもので、この検査でも正常なバックグラウンド(誰でも体内にある放射線量)以上の放射線は検出されなかった。
彼は7日間で10kgの体重を失ったが、目撃から11日後に体力と体重を回復したと語った。
ミハラク氏 WinnipegFreePressより |
6月1日、今度はミハラク本人を伴ってファルコン湖に行き、現場を探したが、彼も見つけられなかったため、信憑性に曇りが生じた。
他にも、聴取では事件前夜にモーテルの飲料室でコーヒーを飲んだと語っていたが、そこのバーテンダーはミハラクに瓶ビールを提供したと主張している点の証言不一致が明らかになった。
RCMPは、ミハラクが現場を見つけるまでは捜査を終了させることにした。
事件現場が見つかる
焼け焦げたミハラクの下着 UFO EXPLORERより |
RCMP分隊リーダーのビスキー氏が夜にミハラクの元を訪れ、その土壌サンプル他を受け取り、放射性物質の検査に送られた。
7月24日、検査機関からの結果がRCMPに届く。
「ステファン・ミハラクが報告したUFO。この研究所で行った検査は、放射能の高い場所から採取された試料を示しています。厚生省放射線防護部門は、地域内の立ち入りが制限されていない場合、他の人々が被曝する可能性があると懸念しています」
7月25日、2回目の検査結果がRCMPに届く。厚生省代表のハント氏をウィニペグに派遣して調査すると述べられていた。
7月27日夕方、ミハラクのもとをハント、ビスキー、CJ.デイヴィスが訪れ、放射性物質の検査所見を説明した。ミハラクは翌日に現場に連れて行くことに同意した。
7月28日午後、一行は現場に向かって歩き、直径4.6mの半円の岩肌の苔が何らかによって取り除かれている以外には、証拠らしい証拠のない現場であった。
ハントはUFO着陸地点の中央を横切る岩の断層に放射能の痕跡を見出した。発見されたのは広く商用に使用されている放射性同位体のラジウム226で、原子炉の廃棄物にも見られる。少量の土壌汚染はあるが、人間がこの地域に入っても危険はないと判断した。
円の外周や、岩の盛り上がりの下の苔や草には放射能の痕跡は見られなかった。
カナダ国防総省の結論
国防総省はファルコン湖事件を未解決と識別している。ミハラクが執筆した本の表紙 TheIronSkeptic.comより |
ミハラクは自身の体験について本を出版した(出身地のポーランド語で書かれた限定的な本だという)が、このひどい体験から経済的恩恵を受けたことはないと主張している。
ミハラクはUFOが宇宙人の物だとは決して言わなかった。医師や警察などの聞き取りによっても言をひるがえすことはなかったが、UFOと接近遭遇したことを証明することもできなかった。
2018年に記念硬貨発行
カナダ国立造幣局ショップのサイトより |
カナダ造幣局は2018年にこの事件を記念した記念硬貨を枚数限定で発売し、あっと言う間に売り切れた。
カナダ政府は、いまだこの事件を未解決事件と認めているようだ。(宇宙人の乗り物だったかどうかはともかく、説明のつかない不思議な事件として)
現場周辺地図
後年、現場と思われる場所に立つ息子のスタン氏 WinnipegFreePressより |
海外の懐疑サイトの検証
海外の懐疑サイトThe Iron Skeptic.comでは、- ミハラクが前日夜だけで最低でもビール5本を持っていたことを隠していた
- 最初警官に助けを求めた際、警官はアルコール臭こそ嗅ぐことはなかったが、血走った目は酔っ払いのようだったと報告している
- 警官に焼けた帽子を見せてきたが、頭には火傷をしなかった理由を答えられなかった
- 警官が彼のシャツを調べることを拒んだ
- 警官の「手袋を溶かすほどの宇宙船に触れたのに、なぜ手を火傷しなかったのか」という質問に答えることを拒んだ
- 放射能のある土壌などがミハラクによって集められたこと
- 捜査員の一人は、ミハラクが酒に起因する幻覚に苦しんだと確信していた
- 警官の報告書では「おそらく木材の灰を胸にこすっていた」とある
などの理由から、酒に酔ったミハラクが何かで火傷をしてしまい、それを有名になりたいためにUFOによるものだと嘘をついたんだろうと結論している。
どうやら警官に助けを拒まれたのでなく、自分から拒んだようだ。このあたりのことはRCMPファルコンビーチハイウェイパトロールの報告書に詳しい。ミハラクは「近づくと皮膚病か放射能をうつしてしまう」などと言い、警官を近づかせなかったとも書いてある。
放射線レベルが通常より高かったのも、当時使われていたラジウムが入った蛍光塗料を文字盤に使った腕時計に同じレベルの放射線があり、それをガイガーカウンターに近づけたためか、同様の物質を使って物質をわずかに放射化することもできるという。
どうやら警官に助けを拒まれたのでなく、自分から拒んだようだ。このあたりのことはRCMPファルコンビーチハイウェイパトロールの報告書に詳しい。ミハラクは「近づくと皮膚病か放射能をうつしてしまう」などと言い、警官を近づかせなかったとも書いてある。
放射線レベルが通常より高かったのも、当時使われていたラジウムが入った蛍光塗料を文字盤に使った腕時計に同じレベルの放射線があり、それをガイガーカウンターに近づけたためか、同様の物質を使って物質をわずかに放射化することもできるという。
RCMPファルコンビーチハイウェイパトロールの報告書
考察
UFO本に書かれていたミシャラクという名前から、旧ソ連あたりの事件という印象だったのだが、ポーランド出身のカナダ人がカナダで起こした(?)事件だったわけだ。
あるUFOの本には「検査によれば、骨髄細胞が死んでいて放射能障害に侵されていたことがわかった」と書いてあったが、カナダの公文書館の情報では放射能障害は否定されているので、こちらを信じていいだろう。放射能障害云々はミハラク自身か、事件をどうしてもあったことにしたい者達(それは商業的理由も含まれる)が吹聴していたのかもしれない。
前述のとおり、燃えた衣服や土壌サンプルは警察による現場検証前にミハラクが勝手に持ってきてしまったものなので、いくら強い放射能が検出されようとも、証拠能力は低くなる。
警官の報告書のとおりであるなら、やはりミハラクの言動はそうとう疑わしいように思う。
もし本当にUFOが存在したのなら、軍のレーダーなどに映る可能性もあったと思う。(「UFOは進んだ科学力でレーダーに映らないようにできるに違いない!」と言われればそれまでだが)
碁石を並べたような火傷の写真が有名で、それが不気味さをかもし出していたが、なかなか事件詳細を調べる機会がなかった。今回、カナダ造幣局の記念硬貨発売のニュースに合わせて調べてみたが、事件のあらましと懐疑的な情報を知ることができて良かった。
子供の頃怖かったフラットウッズモンスターの写真も、事件詳細を知るにつれて怖くなくなった。「調べて、知る」ということは何より楽しい。
同時に、この事件も信憑性が低いとわかったのは、ちょっと寂しくもあり。
あるUFOの本には「検査によれば、骨髄細胞が死んでいて放射能障害に侵されていたことがわかった」と書いてあったが、カナダの公文書館の情報では放射能障害は否定されているので、こちらを信じていいだろう。放射能障害云々はミハラク自身か、事件をどうしてもあったことにしたい者達(それは商業的理由も含まれる)が吹聴していたのかもしれない。
前述のとおり、燃えた衣服や土壌サンプルは警察による現場検証前にミハラクが勝手に持ってきてしまったものなので、いくら強い放射能が検出されようとも、証拠能力は低くなる。
警官の報告書のとおりであるなら、やはりミハラクの言動はそうとう疑わしいように思う。
もし本当にUFOが存在したのなら、軍のレーダーなどに映る可能性もあったと思う。(「UFOは進んだ科学力でレーダーに映らないようにできるに違いない!」と言われればそれまでだが)
碁石を並べたような火傷の写真が有名で、それが不気味さをかもし出していたが、なかなか事件詳細を調べる機会がなかった。今回、カナダ造幣局の記念硬貨発売のニュースに合わせて調べてみたが、事件のあらましと懐疑的な情報を知ることができて良かった。
子供の頃怖かったフラットウッズモンスターの写真も、事件詳細を知るにつれて怖くなくなった。「調べて、知る」ということは何より楽しい。
同時に、この事件も信憑性が低いとわかったのは、ちょっと寂しくもあり。
参考資料
- UFO EXPLORER
- Library and Archives Canada / Falcon Lake, Manitoba(元カナダ国立図書館とカナダ国立公文書館が合併した文書アーカイブスらしい。当時の捜査報告も見られる(本件以外のも!))
- TheIronSkeptic.com
- カナダ国立造幣局公式ショップ
- UFO全百科/小学館/南山宏監修
- WinnipegFreePress
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