1975年2月23日/日本/山梨県甲府市上町
Kami-cho, Koufu-shi, Yamanashi-ken, Japan概要
少年達が目撃したというUFOと宇宙人 「UFOと宇宙」より |
小学2年生二人が不気味な宇宙人と遭遇! 肩をたたかれ、奇妙な言葉で話しかけられる。
折れた柱、土壌の放射能などの物証も多い、日本で最も有名な事件。
同市上町の小学2年生で、親戚どうしの河野雅人君と山畠克博君。山畠君はその日家族で河野雅人君の家に来ており、二人で近くの雇用促進住宅上町宿舎の敷地でローラースケートをして遊んでいた。
時刻は6時30分頃。5時36分の日没後、薄明期の薄暗い時間帯だ。
河野君が東の方にある達沢山上空に、オレンジ色に輝く二つの物体を発見し、山畠君に知らせる。それは大小二つのUFOで、上空で大きく旋回すると、大きな方は方向を北にある愛宕山の方に飛び去り、小さな方はこちらに近づいて来て、頭上の低空で静止した。
するとUFOの底部から黒い筒のような物が地上に向かって伸び、「カチリ、カチリ」というカメラのシャッター音のような音がした。(ガチャンガチャンという音をたてて伸びたという資料もある)
振り向くと不気味な姿の宇宙人が立っていて、テープレコーダーを早送りしたようなキュルキュル(キューキューとも)という声を出したため、腰を抜かしてその場にへたり込んでしまう。
それを見ていた河野君が「逃げろ!」と言うが、山畠君は動けず「逃げれん!」と言うのが精一杯。そのうちに河野君が血相を変えてやってきて山畠君を背負うと、その場から逃げ出した。
ブドウ畑から少し離れた二人は、振り返って3分ほどの間UFOの中を観察した。
開いたドアの中にはもう一人宇宙人がおり、イスに腰掛け、操縦桿のようなものを握り、顔の前にあるテレビのようなものを見ていた。姿は外にいる宇宙人と同じだが、身長が多少低かった。その背後にはメーターのたくさんついた機械類がびっしりとあった。
窓越しに外からは内部は見えなかった。
中にいる宇宙人が自分たちの方に顔を向けてきたので、二人はいよいよ恐ろしくなって自宅へと逃げ出した。
翌24日の月曜日、クラスの学級会でその事を話し、UFOと宇宙人の絵を描いて廊下に貼り出したところ大騒ぎになった。
同じく現在の着陸現場付近のStreetView。正確な現場は手前の分譲地(2020年現在すでに家が建っている)もしくは、現在木工ランドになっている正面の白い建物のあたりと思われる。
山梨県はぶどうの産地なので、市内いたるところにぶどう畑が見られる。
動転した子供の証言であるから、細かな点については実際の体験と違う点もあろうが(前述のとおり、資料によっても若干の記述の違いがある)、上空に怪しい光が飛んでいるだけの多くの目撃事例と違い、不気味なヒューマノイドと、明らかにその乗り物である物体を間近で見て接触までしたというのは興味深い。
最初に二人がUFOにつきまとわれた時、その後着陸した時、近隣住人の目撃がなかったのは残念だ。いくら至近の距離とはいえ、やはり季節的、時間的に、外を見たりする確率は低いのだろうか?
この日は日没(太陽が完全に地平線に沈みきった時刻)が5時36分、薄明(日没後の西の空がまだ明るい状態)終了が6時59分である。
西の空低くに金星と木星が並び、東の空高くに土星が上っている。金星の光度はマイナス3.9等級と非常に明るかった。オリオン座、おうし座、おおいぬ座のシリウスなど、冬の星座もまだ南の空に目立つ時期だ。
上空を飛行機が通過すれば、それも見られたろう。
その後に見たゆっくり北の方に飛んだ物体も、飛行機やヘリコプターで説明できないものではない。「カチャカチャ光りながら」というのがはっきりしない表現ではある。
家もまだまばらで見通しも良かったであろうし、暗い時間に明るいUFOが飛行、着陸していればもっともっと多くの近隣住民に目撃されていてもおかしくないはずなのだが、そういった目撃証言が乏しい点が非常に気にかかる。
少年達の遭遇と別に起きたことであれば、Sさんも矢追さんも間違えることはなかったろう。Sさんの記憶が7年間の間にぼやけて「5時半頃だったと思います」と言ったり、矢追さんが間違えたか誤植したのではないか?
宇宙人と怪人が同一個体かはわからないが、無関係の異形の者が2体ずつ出現するより、それらは何らかの関係があると考えた方が自然ではないだろうか。
不思議なのは、現場となったブドウ畑の所有者の証言が聞かれないことだ。UFOと宇宙人かどうかはともかく、何者かが自分の畑に入り込み、柱や針金のネットを傷つけ、子供達を脅かし、放射性物質を残していったかもしれないというのにだ。
所有者がマスコミやUFO研究家を名乗る人々に根掘り葉掘り聞かれることを嫌い、取材を断ったことも考えられるが、それならそれでそういった情報があっても良さそうだ。
ブドウ畑で何か作業をするとなれば、そこの所有者であることが一番多いだろう。所有者の人達が何か作業していたのを見間違えただけということは、十分ありえる。
折れた柱、曲がった針金、リヤカーのような轍がUFOによるものなのか、元からそうだったのかはきちんと調べられたのだろうか?
宇宙人の描写については、「帰ってきたウルトラマン」最終回(1972年3月31日本放送)の「バット星人」のソフトビニール人形に似ているという意見がある。
顔中のシワや耳の形ならウルトラセブンに出てきたフック星人(1968年8月25日本放送)の方がさらに似ているだろう。何度も再放送されており、当時の子供なら見ていておかしくない番組だ。事件の真偽はともかく、宇宙人の描写が無意識にこれらのイメージに引っ張られたことは十分に考えられる。
事件から長期間たっており完全解決することは難しいかもしれないが、常識と非常識の間を漂いながら、この事件について考察することを楽しみたい。
折れた柱、土壌の放射能などの物証も多い、日本で最も有名な事件。
詳細
上空からUFOに追いかけられる
現場で説明をする山畠君(左)と河野君 ぶどう畑とはいうが、ぶどうの木自体がないのは少々気にかかる |
時刻は6時30分頃。5時36分の日没後、薄明期の薄暗い時間帯だ。
河野君が東の方にある達沢山上空に、オレンジ色に輝く二つの物体を発見し、山畠君に知らせる。それは大小二つのUFOで、上空で大きく旋回すると、大きな方は方向を北にある愛宕山の方に飛び去り、小さな方はこちらに近づいて来て、頭上の低空で静止した。
上空のUFOと、底部から伸びた筒状のもの 「UFOと宇宙」より |
二人が隠れた近所のお寺、福王寺 2008年5月4日筆者撮影 |
鉄砲のような武器で狙われていると思った二人は恐ろしくなり、河野君の家に逃げ帰ろうとしたが、UFOが頭上をついてきたため、東側にある近くの福王寺の境内のお墓に隠れた。
しばらくするとそのUFOも、もう一機と同様に北の方向のブドウ畑の方に去っていった。
しばらくするとそのUFOも、もう一機と同様に北の方向のブドウ畑の方に去っていった。
ぶどう畑に出現したUFOと宇宙人と接触!
ほっとした二人が北側にある家に帰る途中、道の60〜70mほど先にあるブドウ畑の中に炎のような光を目撃する。火事だと思った二人は、あぜ道を走って近づく。※光は明滅を繰り返していたが、二人が数十m手前に近づいた時、ブドウ畑の中央部に横滑りで移動し、急に青白い光になった。それは先ほどのUFOだった。(「宇宙からの侵入者」)
この記載は1982年の本に少年達の証言としてあるのだが、最初期の資料「UFOと宇宙」には載っておらず、念のため留意しておきたい。
現場に立つ7年後の少年達 |
※余談だが、当時の現場写真を見ると柱と天井の針金はあっても、肝心のブドウの木が見られない。冬で休耕中だったため、つる一本ない空き地同然だったという。(「宇宙からの侵入者」)
つるどころか幹や枝まで見えないが、部分的に植えられていない/写真に写りにくい所だったんだろうか?
7年後の番組で行った現場では細い幹と枝が若干見られる。
恐怖心よりも好奇心が勝った二人は、UFOの1m程度まで近づき、周囲をぐるぐると観察した。
それは以下の様なものであった。
河野君が一人で観察していた時、突然ガチャガチャと鍵を開けるような音がした後に、文字の右横のドアがバタンと開き、手前に倒れて階段になった。そして不気味な姿の宇宙人が前かがみになって下りてきた。足音は聞こえなかった。
それは以下の様なものであった。
- 直径2.5m(資料によっては5m)で乗用車程度
- 高さ1.5m(同2m)
- ドーム部分の下に皿を逆さにしたような本体のある円盤型
- 底部に3個の球形の着陸ギア
- ドームと本体の間に青く輝く半透明の四角い窓が機体を一周し、黒い枠が沢山はめ込まれている
- 機体表面はステンレスのような銀色で、薄暗く輝いていたように見えた
- 本体には見たこともない文字が5個横書きされていた。UFOの反対側にも別な文字が横書きされていた。
- 最初はドーム部分が回転していたが、やがて停止した(この点に言及していない初期資料あり)
機体に描かれた謎の文字
UFOの機体に描かれた謎の文字 漢字っぽい。 「UFOと宇宙」より |
数分間UFOを観察していた二人。機体正面には5つの文字のようなものがあった。こちらは河野君の書いたものを見ると漢字っぽいデザイン。
反対側に回った山畠君はまた別の文字を見る。こちらは山畠君が「Aを書いて、つながってBを書いてC…」と言うようにアルファベットっぽかったようで、ABCのようなものの後ははっきり覚えていないという。
宇宙人登場
宇宙人の姿 「UFOと宇宙」より |
- 宇宙人の姿身長120〜130cmくらい
- 顔の色は茶色
- 頭部に髪の毛は生えておらず、仮面をかぶっているように見えた
- 顔一面に深い横ジワが走っていて、目は確認できない
- 口のあたりに3本の銀色のキバが生えていた
- 耳はウサギのように長く大きく尖っており、真ん中には穴があいていた
- 手の指は4本で、茶色の手袋のようなものをしていたように見えた
- 足の指は長靴のようで、足袋のように2本に分かれていた
- 銀色に光る服を着ていて、腰にベルト
- 先端がラッパのように開いた銃らしき物を肩からさげていた
山畠君、宇宙人に肩を叩かれ、話しかけられる!
反対側で観察していた山畠君は、背後にいた宇宙人の左手によって左肩を二回叩かれる。振り向くと不気味な姿の宇宙人が立っていて、テープレコーダーを早送りしたようなキュルキュル(キューキューとも)という声を出したため、腰を抜かしてその場にへたり込んでしまう。
並木伸一郎氏のUFO本(ムーSPECIAL 決定版超怪奇UFO現象FILE/2008年)では、宇宙人がキュルキュルした声で山畠君に対して「河野君かな?」と話しかけたことになっている。 しかし事件当時の詳細な資料、本人の証言にも、日本語で話しかけた記述はない。後づけに加えられた誤情報だと思われる。 日本語で話しかけ、名前まで知っていたかどうかは非常に重要な点だ。余計な誤情報を付け加えるのはやめてほしい。身の危険を感じ、死んだふりをして薄目を開けて宇宙人を観察していると、宇宙人は早足に歩き回りながら辺り一帯を観察しているようだった。
どうやら山畠君が肩を叩かれた際に「河野君かな?」と思ったことを、間違えて宇宙人がしゃべったことにしてしまったようだ。並木さん本人が間違えるとは思えないので、ゴーストライターが資料を見て勘違いして書いたことが推測される。どちらにしてももっとちゃんとしてほしい。
なお、事件直後の「UFOと宇宙」の取材に対し、河野君は「(宇宙人は日本語は)しゃべらんかったよ」と明言している。
それを見ていた河野君が「逃げろ!」と言うが、山畠君は動けず「逃げれん!」と言うのが精一杯。そのうちに河野君が血相を変えてやってきて山畠君を背負うと、その場から逃げ出した。
UFOの内部ともう一人の宇宙人
UFOの中にいたもう一人の宇宙人 「UFOと宇宙」より |
開いたドアの中にはもう一人宇宙人がおり、イスに腰掛け、操縦桿のようなものを握り、顔の前にあるテレビのようなものを見ていた。姿は外にいる宇宙人と同じだが、身長が多少低かった。その背後にはメーターのたくさんついた機械類がびっしりとあった。
窓越しに外からは内部は見えなかった。
中にいる宇宙人が自分たちの方に顔を向けてきたので、二人はいよいよ恐ろしくなって自宅へと逃げ出した。
母親達を連れて戻って来る
河野君の家には山畠君の両親と山畠君の兄(9/小学3年生)も来ていた。
そこに駆け込んできた少年達は「UFOだ、UFOだ!」と騒ぎ立てる。「何言ってるの。もうご飯でしょ」とたしなめた母親だが、青ざめた少年達が「いいから早く来て。宇宙人みたいのがいる!」とあまりに言うものだから、半信半疑で一度行ってみることにした。
河野君、山畠君が母親達と山畠君の兄を連れてブドウ畑が見える道に出ると、たしかにブドウ畑の真ん中にオレンジ色に輝く物体があった。それはくるくる回りながら光っており、5〜10秒周期で明滅していた。光り方はパトカーの警告灯とは全く違ったという。
河野君、山畠君が母親達と山畠君の兄を連れてブドウ畑が見える道に出ると、たしかにブドウ畑の真ん中にオレンジ色に輝く物体があった。それはくるくる回りながら光っており、5〜10秒周期で明滅していた。光り方はパトカーの警告灯とは全く違ったという。
(見かけ上ドッジボールくらいの大きさという資料もある)
山畠君の母親が「見に行く」と言ったところ、少年達が「連れて行かれちゃうから行くな!」と手を引っ張って必死に止めた。
少年の言うことが本当なので、河野君の母親が自宅にいる父親達に知らせに行く。その間河野君の弟が泣いてしょうがなかったという。
(その間に光は最後にとても強くなり、スーッと消えてしまった。光が強くなった際、山畠君の兄が宇宙人が横に歩いて行くのを見た、という資料もある)
(7年後のインタビューで河野君の父親が「目もくらむようなオレンジ色の光が見えた。あれがライトということはない」と語っている。これは自分はほとんど見られなかったのに、母親達の証言に引っ張られて7年の間に自分も見たつもりになってしまったのかもしれないので注意)
棒を持った大人3人と子供達が現場に行ってみたが、もうUFOも宇宙人の姿も見えず、暗くて何もわからない。
(この時点でブドウ畑の柱が折れているのを発見したという資料もある)
「ヒトダマでも見たんじゃないのか?」などと言いながら家に戻って来た。
少年達は「お父さん、宇宙人がこんなかっこうで降りて来たよ!」と話し出したが、父親は不思議には思ったものの、あまりちゃんと話を聞いてやらなかった。
山畠君の母親が「見に行く」と言ったところ、少年達が「連れて行かれちゃうから行くな!」と手を引っ張って必死に止めた。
少年の言うことが本当なので、河野君の母親が自宅にいる父親達に知らせに行く。その間河野君の弟が泣いてしょうがなかったという。
父親達もやって来る
怪しい光を遠目に観察しながら「早く来ればいいのに」と思いながら待つこと3〜4分して、ようやく河野君の母親が父親達を連れてやって来たが、その時には光が消えかかってほとんど見えなくなっていた。(その間に光は最後にとても強くなり、スーッと消えてしまった。光が強くなった際、山畠君の兄が宇宙人が横に歩いて行くのを見た、という資料もある)
(7年後のインタビューで河野君の父親が「目もくらむようなオレンジ色の光が見えた。あれがライトということはない」と語っている。これは自分はほとんど見られなかったのに、母親達の証言に引っ張られて7年の間に自分も見たつもりになってしまったのかもしれないので注意)
棒を持った大人3人と子供達が現場に行ってみたが、もうUFOも宇宙人の姿も見えず、暗くて何もわからない。
(この時点でブドウ畑の柱が折れているのを発見したという資料もある)
「ヒトダマでも見たんじゃないのか?」などと言いながら家に戻って来た。
少年達は「お父さん、宇宙人がこんなかっこうで降りて来たよ!」と話し出したが、父親は不思議には思ったものの、あまりちゃんと話を聞いてやらなかった。
トラウマになった少年達
この体験がショックだったのか、その晩、河野君は原因不明の夜泣きをして両親を悩ませた。山畠君も夜になると外を一人で歩けなくなってしまった。学校で騒ぎになり、新聞社に連絡して現場検証
UFOが折ったとされるブドウ畑の柱 「UFOと宇宙」より |
後述する同学年のM少年による車内からの光体の目撃も、その一助になったようだ。
担任の女性のU先生も最初は「そんな馬鹿なことが…」と取り合わなかったが、あまりに真剣に話すので校長先生を通じて山梨日日新聞に連絡してもらい、新聞記者達と一緒に二人を連れて現場を見に行った。
U先生は「山畠君は普通の児童、河野君も発想の豊かな子だが、二人とも嘘をつくような子ではない」という。
またコンクリートの柱が折れていて、足跡のようなものもあったと思うという。
この母娘は翌日以降に現場を見に行った近所の人だろう。
足跡は現場を訪れた少年達一家や、野次馬達のものかもしれない。
事件に興味を持った同市の県立機山工業高校電気科教諭M氏は、数日後、科学研究部の生徒達とともに現場の放射線量を測定した。M教諭は国家資格である第一種放射線取扱主任者の資格を持っており、放射線測定技術の実地訓練という軽い気持で測定した。
自然界にも微量の放射能が存在し、放射線量の半減期は非常に長いか、短くても常に補充されるために量的には安定している。
自然界に存在する放射性物質として、例えば化学肥料には放射性同位元素カリウム40が含まれるものがあるが、半減期が12億5千万年と非常に長い。他にもウラン238が同44億6800万年、炭素14が同5700年である。
しかし教諭が現場のブドウ畑の40カ所近くからサンプルを採取し、約1ヶ月にわたってガイガーカウンターで測定を続けたところ、以下の特徴が見られた。
- ブドウ畑のコンクリート製の柱の破損。少年達はUFOが押し倒したものと主張。
- 一本折れ、もう一本が傷ついていた(「UFOと宇宙」「世界UFO大百科」)
- 一本が折れ、一本が傾き、一本が横倒し(「宇宙からの侵略者」)
- 柱の上に張られたブドウのツルを這わせるための金網は、重い物を乗せたように大きく広がっていた(金網の針金はゆるんでいたが、切れてはいなかった)
- 着陸地点の地面には数カ所の穴があり、少年達はUFOの着陸脚の痕と言い張る
- リヤカーの轍のような跡があった。
U先生は「山畠君は普通の児童、河野君も発想の豊かな子だが、二人とも嘘をつくような子ではない」という。
事件現場の目撃証言
矢追さんの番組でインタビューされていたAさん母娘(?)によれば、現場には地面に押し付けたような直径5〜60cmの穴が一つ開いていて、白い灰のようなものがついていた。またコンクリートの柱が折れていて、足跡のようなものもあったと思うという。
この母娘は翌日以降に現場を見に行った近所の人だろう。
足跡は現場を訪れた少年達一家や、野次馬達のものかもしれない。
現場土壌から人工的な放射線を検出
現場の土壌サンプルの放射能減衰曲線 |
M教諭 |
自然界にも微量の放射能が存在し、放射線量の半減期は非常に長いか、短くても常に補充されるために量的には安定している。
自然界に存在する放射性物質として、例えば化学肥料には放射性同位元素カリウム40が含まれるものがあるが、半減期が12億5千万年と非常に長い。他にもウラン238が同44億6800万年、炭素14が同5700年である。
しかし教諭が現場のブドウ畑の40カ所近くからサンプルを採取し、約1ヶ月にわたってガイガーカウンターで測定を続けたところ、以下の特徴が見られた。
- 自然放射能よりエネルギー量が多い
- 人工放射能特有の急激な減衰(=半減期が短い)
さらにM教諭は、より精密な測定を原子力発電関係の研究所の友人に依頼した。
結果は、天然のものではないと思われる弱いβ線(電子)が検出され、地球上に存在する鉄や鉛、カルシウムなどの原子が放射線を受けて他の核種に変化したものが認められた。
ただし、それがUFOによるものか、地球上の核実験による降下物などによるかはわからなかったという。(この時代、アメリカ、旧ソビエト連邦に加え、中国が核実験を行なっている)
M教諭のサンプル採取はブドウ畑内だったため他の場所との比較ができず、またどのサンプルがどの地点からの採取という記録を取っておかなかったため、UFO着陸地点ときちんと一致するかどうかが不明確である点が残念である。
河野君宅から500mほど東にある甲府市環境センター管理人のAさんが、6時半頃に明滅する物体が飛ぶのを目撃。
犬が吠えるので工場まで見に行って戻って来ると、東にある工場の屋根から黄色い光体が尾を引きながらすごい速さで出て来て、建物の屋根に隠れてしまった。急いで見晴らしの良い場所まで行ったが見失った。
西の方を見たら、一番星(当夜は西の空低くに金星と木星が見えていた)よりもっと大きく輝くものがカチャカチャ光りながらゆっくり北の方に動いていた。飛行機でもないし、変なものがあると思いながらしばらく観察し、夕食のために家に入った。
それから5分もしないうちに窓を開けてみたらもう何も見えなかった。流星かとも思ったが、流星にしては変だとも考えた。役所の人も同じものを見たといい、「流星だろう」と言っていた。
怪人達がどかないので一旦停車したが、ゆっくりとすれすれを通過した。その際にもう一人の怪人を見たが、まったく同じ顔をしていた。
Sさんが窓を開けて「なんですか?」と訝しげに尋ねると、男性は「UFOを見ませんでしたか!?」と言う。
とっさに先ほどの怪人達とUFOを結び付けられず、「いいえ、知りません」と答えると、彼らは車とすれ違いに走って行ってしまった。集金を急ぐSさんも、そのまま集金先に向かった。
より大きな地図で 甲府事件詳細マップ を表示
UFOの着陸地点を、より詳細な資料に基づいて変更しました。
地図をズームアウトすると、他の目撃証言の場所も載っています。
結果は、天然のものではないと思われる弱いβ線(電子)が検出され、地球上に存在する鉄や鉛、カルシウムなどの原子が放射線を受けて他の核種に変化したものが認められた。
ただし、それがUFOによるものか、地球上の核実験による降下物などによるかはわからなかったという。(この時代、アメリカ、旧ソビエト連邦に加え、中国が核実験を行なっている)
M教諭のサンプル採取はブドウ畑内だったため他の場所との比較ができず、またどのサンプルがどの地点からの採取という記録を取っておかなかったため、UFO着陸地点ときちんと一致するかどうかが不明確である点が残念である。
複数の目撃者
以下は事件が公表されてから明らかになった目撃証言である。これら全てが少年達が見たUFOと同じものかはわからないということは注意しておきたい。甲府市環境センター Aさんの目撃
甲府市環境センター(2008年5月4日撮影) |
西の方を見たら、一番星(当夜は西の空低くに金星と木星が見えていた)よりもっと大きく輝くものがカチャカチャ光りながらゆっくり北の方に動いていた。飛行機でもないし、変なものがあると思いながらしばらく観察し、夕食のために家に入った。
それから5分もしないうちに窓を開けてみたらもう何も見えなかった。流星かとも思ったが、流星にしては変だとも考えた。役所の人も同じものを見たといい、「流星だろう」と言っていた。
不思議なものを見たと思っていたら、翌日になって少年達の騒ぎを知ったという。
同校の小学二年生の目撃
2少年の目撃の30分ほど前、2少年と同じ小学校の二年生 M少年(8)が車内から発光体を目撃していたと証言。これによって話が大きくなったという。
少年は家族7人で現場北に位置する甲府市増坪町の国道20号線(甲府バイパス)を走行中だった。
山梨日日新聞の記事では「光るものが日の出団地の方にいったのを目撃した」。
記事では次のようにも指摘されている。
「同夜の甲府地方は雲一つない快晴。運輸省航空局の話では、甲府上空の午後六時から七時の間は定期便が飛ぶこともあり、特に3000メートルの高度を飛ぶYS11型プロペラ機などの尾灯、照明灯などの光りが肉眼でもはっきり見える可能性もあるという」
南山宏氏の「宇宙からの侵入者」では「雇用促進事業団・上町住宅の方角の夜空に、青白い発光体が行きつもどりつしているのを目撃」。
常光寺住職の目撃
夜7時頃、現場の数km南にある下今井町・常光寺のS住職(59)が、寺の南の空にジグザグ飛行をして急降下して消え去ったピンポン玉くらいの青白い光を目撃。
日の出団地の女の子の目撃
少年達と同じ日の出団地のDちゃんという女の子(資料に年齢の記載なし)も、その夜(時刻の記載なし)家のベランダからUFOを目撃。
保険外交員の女性が怪人目撃を7年後に告白
以下の証言は、事件から7年たった1982年頃に、初めてマスコミに明かされた内容である。
保険外交員のSさんは当時、その日の出来事を夫達に話したが、「そんなバカなことを言っても、バカにされるだけだ」と言って反対されたため、それ以上他人に話すことはなかった。
しかし約7年後、旅行先でこの話をしたところ、まわりの人達から「絶対に知らせた方がいい」と勧められ、手紙を送ることになったという。手紙の送り先は言及されていないが、資料とした日本テレビの深夜番組「11PM」で矢追さんがSさんに取材したものが番組になっている。
保険外交員のSさんは当時、その日の出来事を夫達に話したが、「そんなバカなことを言っても、バカにされるだけだ」と言って反対されたため、それ以上他人に話すことはなかった。
しかし約7年後、旅行先でこの話をしたところ、まわりの人達から「絶対に知らせた方がいい」と勧められ、手紙を送ることになったという。手紙の送り先は言及されていないが、資料とした日本テレビの深夜番組「11PM」で矢追さんがSさんに取材したものが番組になっている。
河野君、山畠君の一家がUFOと宇宙人を見失ったと思しき同時刻、保険外交員の女性Sさんは、次の集金先に向かって車で道を急いでいた。(時刻に関しては確認の余地があるようなので後述する)
事件のあった上町に向けて、増坪町の方から細い道を南下してきたところ、ドンドンという打上げ花火のような音を聞く。
狭い道の途中に立ちふさがる二人の「中学生かと思うような男の子」に気付いた。身長130〜140cmくらい、土人の仮装でもしているのかと思うほど真っ黒に見えたその「子供」達は、クラクションを鳴らしてもどこうとしない。
しょうがないので最徐行をして避けて通ろうとすると、一人がフロントグラスに手を付け、顔を寄せてきた。Sさんはその異様な姿に驚く。
事件のあった上町に向けて、増坪町の方から細い道を南下してきたところ、ドンドンという打上げ花火のような音を聞く。
狭い道の途中に立ちふさがる二人の「中学生かと思うような男の子」に気付いた。身長130〜140cmくらい、土人の仮装でもしているのかと思うほど真っ黒に見えたその「子供」達は、クラクションを鳴らしてもどこうとしない。
しょうがないので最徐行をして避けて通ろうとすると、一人がフロントグラスに手を付け、顔を寄せてきた。Sさんはその異様な姿に驚く。
Sさんが遭遇した怪人 短時間の目撃だったため、細かな点は覚えがないという |
- 目の下はまっすぐで、幾重にもなってクシャクシャの上まぶた
- 鼻は存在した
- 真っ黒の手のひらもシワだらけだったが、手相のシワは見当たらない
- 手首が亀のように黒くてこれもシワだらけ
- 顔と手以外は観察する余裕がなかった
怪人達がどかないので一旦停車したが、ゆっくりとすれすれを通過した。その際にもう一人の怪人を見たが、まったく同じ顔をしていた。
UFOを探す一団とすれ違う
すぐ先の十字路を越えて日の出団地の東側の道を南下すると、道の先から棒を手にした子連れの男女の一団が走ってきて、Sさんの車は手を広げて止められた。子供達もガヤガヤと騒いでいる。Sさんが窓を開けて「なんですか?」と訝しげに尋ねると、男性は「UFOを見ませんでしたか!?」と言う。
とっさに先ほどの怪人達とUFOを結び付けられず、「いいえ、知りません」と答えると、彼らは車とすれ違いに走って行ってしまった。集金を急ぐSさんも、そのまま集金先に向かった。
現場地図
事件当時の航空写真
現場周辺地図と少年達の移動ルート
より大きな地図で 甲府事件詳細マップ を表示
地図をズームアウトすると、他の目撃証言の場所も載っています。
山梨県はぶどうの産地なので、市内いたるところにぶどう畑が見られる。
考察
何人もの目撃者があり、物的な証拠もあるこの事件は、実際に何かがあったという意味においてはかなり信憑性のある事件とみなすことができよう。(全員グルになっての嘘でしたと言うならともかくだが)動転した子供の証言であるから、細かな点については実際の体験と違う点もあろうが(前述のとおり、資料によっても若干の記述の違いがある)、上空に怪しい光が飛んでいるだけの多くの目撃事例と違い、不気味なヒューマノイドと、明らかにその乗り物である物体を間近で見て接触までしたというのは興味深い。
最初に二人がUFOにつきまとわれた時、その後着陸した時、近隣住人の目撃がなかったのは残念だ。いくら至近の距離とはいえ、やはり季節的、時間的に、外を見たりする確率は低いのだろうか?
当時の空の様子
ステラナビゲーター11で当時の星空を再現 |
西の空低くに金星と木星が並び、東の空高くに土星が上っている。金星の光度はマイナス3.9等級と非常に明るかった。オリオン座、おうし座、おおいぬ座のシリウスなど、冬の星座もまだ南の空に目立つ時期だ。
当時の明るさは?
どんどん暗くなっていっているが、満月に近い月明かりがあるため、近づけばまだ顔などはギリギリわかる程度だったと思う。周囲の家もまばらで街灯も少なかったであろう時代だから、暗さは都会の生活とはだいぶ違うものだったはずだ。
UFOが発光していたから宇宙人の顔がよく見えたはずだという意見もあるのだが、暗い中での照明は明るければ明るいほど逆光になると対象物に強い影を作り、より見づらくなる。
たしかに順光の時には見やすくなるが、動き回っているなら角度が変わればすぐに影ができ、より一層不気味な姿に見せたろう。
甲府の18時の気象データ(気象庁より)
- 気温 4.1℃
- 雲量 2
- 風速 3.3m/s
- 風向 北北西
- 最高気温 8.1℃(平年11.0℃)
- 最低気温 -5.2℃(平年-0.1℃)
- 日照時間 8.8時間
- 平均風速 2.1m/s
- 平均湿度 44%
- 天気概況(18時〜翌日6時) 降水なし
上空を飛行機が通過すれば、それも見られたろう。
他の目撃者の証言について
環境センターのAさんが最初に見た、尾を引きながら高速で飛んだ光体は流星の可能性がある。直前に犬が鳴いたというのも異常行動としては捉え難い。その後に見たゆっくり北の方に飛んだ物体も、飛行機やヘリコプターで説明できないものではない。「カチャカチャ光りながら」というのがはっきりしない表現ではある。
当人は飛行機ではないと言っているが、筆者の経験上、飛行機の見分けがつかない人は多いし、角度や距離によっても見え方は変わる。
常光寺住職の目撃は少年達の現場の南側からさらに南の空に見えたことなので、少年達の見たUFOと関連があるかは不明だ。少年達が見たUFOは飛び去るシーンが目撃されていない。ジグザグに動いたというのも目の錯覚ということがあり得るので、慎重になりたい。
甲府バイパスを走る親子の証言が正しければ、少年達の体験とともに、何らかの飛行物体が上空にあった可能性はありそうだ。
常光寺住職の目撃は少年達の現場の南側からさらに南の空に見えたことなので、少年達の見たUFOと関連があるかは不明だ。少年達が見たUFOは飛び去るシーンが目撃されていない。ジグザグに動いたというのも目の錯覚ということがあり得るので、慎重になりたい。
甲府バイパスを走る親子の証言が正しければ、少年達の体験とともに、何らかの飛行物体が上空にあった可能性はありそうだ。
ただしこれら目撃の信憑性については、何の客観的証拠がないことに注意したい。事件を知った後付けで「あれがUFOだったに違いない」、「不思議なものに見えた」ということはUFO事件においてよくあることだ。事件のことが明るみにならなければ、特に気にも留めずにそのまま忘れてしまったようなものだったんじゃないだろうか。
例えば地震の前に「動物が騒いだ!」「奇妙な雲が出ていた」などという宏観異常現象 というものも統計的、気象学的に存在しないのだが、人は「そういえばおかしなことがあった」と無関係なものをこじつけてしまう。それと同じことが本件で起きていても何もおかしいことではなかろう。
近隣住人による目撃は?
日の出団地の女の子は一番現場に近いので、本当なら重要な証言のはずだ。しかし資料には極めて曖昧な記述しかないので、どう捉えていいか迷う。家もまだまばらで見通しも良かったであろうし、暗い時間に明るいUFOが飛行、着陸していればもっともっと多くの近隣住民に目撃されていてもおかしくないはずなのだが、そういった目撃証言が乏しい点が非常に気にかかる。
もしかしたら、目撃しても付近の住人からしたら気にも留めないようなごくごく普通の光景だったのかもしれない?(つまり超常的なものではなかった)
保険外交員Sさんの目撃について
見たのは同じ宇宙人?
シワだらけで顔が黒っぽい点は似ているが、目の有無、口元のキバの有無などは相違している。
しかし怪人の容姿の細かい点については、短時間の目撃でもあってはっきり記憶していたとは思えず、告白するまでの7年間の間に記憶が変わってしまった可能性も高いことを考慮する必要があると思う。
遭遇時刻について
2017年出版のASIOS著「UFO事件クロニクル」によると、Sさんの一件は少年達による一件の1時間近くも前、つまり5時半〜6時頃だという。
筆者はまだこの情報の出典(「UFOと宇宙」1983年4月号、5月号の矢追さんによる記事「甲府事件に、衝撃的な新証言出現!!」と思われる)に当たれていないが、もしASIOSの記事が本当であったとすれば別の疑問が生じる。
つまり事件の1時間ほど前のまだ明るい時間にも少年達一家とはまた別にUFOを追いかける一家がおり(双方とも棒を手にした子連れ)、当然その対象となるUFO(のように見える飛行物体)が付近にあり、宇宙人と怪人という似通ったヒューマノイドがそれぞれ目撃されている。これはいくらなんでも偶然すぎないだろうか。
つまり事件の1時間ほど前のまだ明るい時間にも少年達一家とはまた別にUFOを追いかける一家がおり(双方とも棒を手にした子連れ)、当然その対象となるUFO(のように見える飛行物体)が付近にあり、宇宙人と怪人という似通ったヒューマノイドがそれぞれ目撃されている。これはいくらなんでも偶然すぎないだろうか。
少年達の遭遇と別に起きたことであれば、Sさんも矢追さんも間違えることはなかったろう。Sさんの記憶が7年間の間にぼやけて「5時半頃だったと思います」と言ったり、矢追さんが間違えたか誤植したのではないか?
宇宙人と怪人が同一個体かはわからないが、無関係の異形の者が2体ずつ出現するより、それらは何らかの関係があると考えた方が自然ではないだろうか。
すれ違った一団は少年達の一家?
棒を手にした子連れの男女の一団ということで、少年達一家と似ている。しかし資料には、UFOの光を見失った一家が帰宅前にUFOを少しでも探し、近所を歩いたことは書かれていない。すれ違った道は河野君の家を通り越した反対側なので、家に帰る途中にすれ違ったわけではないはずだ。
Sさんの証言は真実?
事件当時少年達一家がSさんらしき人と会った記憶はなく、事件に関する動画などを見た家族が「嘘ばっかり言ってる」と語っていたとしている。
これが一家の記憶違い(何十年も前にすれ違った人を覚えていなくても無理はない)でないなら、Sさんの証言の信憑性が非常に怪しくなる。もしSさんの証言が虚偽、もしくは大きな記憶違いであるなら、怪人を見たという事件の信憑性を大きく高めていた要素が一つ消えることとなる。
現時点では以下のように整理する。
- Sさんがすれ違った一家は少年達一家である方が整合性が取れる
- ただし少年達一家の中でSさんとすれ違った記憶はないとの証言があり、時刻の相違も含め、証言の信憑性に疑問が生じている
- 時刻の相違については今後資料を入手して調べる
- Sさんの記憶違いで甲府事件とは全く別件だった可能性、もしくは虚言という可能性もある
ブドウ畑の所有者の証言は?
そうでなくても翌日から少年達や先生、マスコミ、野次馬などが大勢押し寄せて勝手に畑に入るのだから、それを知らないわけがない。
警察も来たという情報もあるのだが、まだはっきりしないので保留しておく。
所有者がマスコミやUFO研究家を名乗る人々に根掘り葉掘り聞かれることを嫌い、取材を断ったことも考えられるが、それならそれでそういった情報があっても良さそうだ。
ブドウ畑で何か作業をするとなれば、そこの所有者であることが一番多いだろう。所有者の人達が何か作業していたのを見間違えただけということは、十分ありえる。
UFOの大きさに関する南山宏氏の疑問点
UFO研究家である南山宏氏は、事件に高い信憑性を感じつつも、針金と柱によって囲まれたブドウ畑の中心に、どうやってUFOが侵入したのかについては疑問を呈している。(「宇宙からの侵入者」)本によると、少年達の証言として、UFOは少年達が数十mに近づいたところで横滑りして畑の中央に移動した(畑の外からかどうかはわからない)とある。(ただしその他の資料ではこうした記述は見られない)
仮にそうだとしても、柱の間隔とUFOの大きさを比べると、外側の柱を傷つけずに中央付近に入る事は物理的に不可能である。同様に真上から降下したとしても、針金を切らずに降りる事は不可能だ。
- UFOのサイズ
- 直径4.8m〜5m強(少年達の現場検証に基づく実測値)
- 高さ2m近く
- ぶどう畑の柱の間隔は平均1.7m〜2.2m弱
折れた柱、曲がった針金、リヤカーのような轍がUFOによるものなのか、元からそうだったのかはきちんと調べられたのだろうか?
注意したいのはUFOのサイズ、宇宙人の身長についても、少年達が何センチだった、何メートルだったと言ったところでそれは子供の感覚でしかない。大人でも正確に1mなり2mなりを現すのは難しいはずだ。
具体的なサイズの数字より、現場検証時に「これくらいだった」と示した大きさが少年達が見た正確なサイズに近いだろうと思う。ただしそれでも様々な要因で間違うことはあるので、着陸痕でもない限りは参考程度の値となる。
ウルトラマンの宇宙人に酷似?
新ウルトラマンのバット星人 実際に似ているのは当時のソフトビニール人形だという。 |
ウルトラセブンのフック星人 |
顔中のシワや耳の形ならウルトラセブンに出てきたフック星人(1968年8月25日本放送)の方がさらに似ているだろう。何度も再放送されており、当時の子供なら見ていておかしくない番組だ。事件の真偽はともかく、宇宙人の描写が無意識にこれらのイメージに引っ張られたことは十分に考えられる。
そうでなくても、怪物のイメージとして顔に目鼻がないとか、キバがあるとか、そうした発想はあってもおかしくはないので、少年達が実際に番組や人形を知っていたかはさしたる問題ではないだろう。
見間違えの可能性
筆者はこれまで10年以上にわたるUFO事件簿の記事の執筆過程で、人は物事を見誤りやすいという印象を持った。実際かなりのUFO目撃が何かの見誤りであることがわかっており、当然この事件も何かの偶然が重なった末の見誤りの可能性が高いのではないかと考える。そもそもだが、少年達が細かな点を証言しているのが気になる点だ。幼い子供達がまだ寒い薄暗い時間帯にとびっきりの恐怖体験をしたのである。それならばごく一部を除いて、記憶があやふやで怪しくなっている方が自然ではないか。
要は、仮に何かと遭遇していたとしても、見間違いや思い込み、後付けに記憶が変わってしまっている可能性も十分に考えられることから、客観的な証拠がない限りは少年達の証言を鵜呑みにできないというわけだ。
また空を飛んでいたUFO、着陸したUFO、宇宙人をまとめて説明しようとするから苦しい三題話のようになって「超常現象に違いない」という結論を導いてしまうのではないか?
まず初めに見た2機のUFOについて、飛び去った方角が一致するというだけでそれがブドウ畑に着陸した確証はないので、これは一旦切り離して考えてみたい。
少年達は円盤型だったと言うのだが、その後に見たブドウ畑の物体に影響され、「頭上に来たのも円盤型だった」と記憶違いしたことも考えうる。宇宙人との遭遇という恐怖体験の後なのだから、直前の記憶が曖昧になり、恐怖体験の方の記憶に引っ張られることもあり得るだろう。
少年達の証言は尊重しつつ、他の目撃者の存在やヘリコプターなどの飛行記録が明らかになるまでは保留してもいいと思う。
着陸したUFOと宇宙人については、一つの仮定として、全身を覆う防毒マスクや作業着を着込んで農薬の散布や、草刈機で下草刈りでもしていたというのはどうか? 全てを説明できておらず少し強引かもしれないが、推測の叩き台としての仮説をお披露目したい。
宇宙人の低い身長や、UFOに見せかけた何かを用意しあっと言う間に撤収するなどを考えると、子供だけ、大人だけのしわざとは考えにくい。
まず初めに見た2機のUFOについて、飛び去った方角が一致するというだけでそれがブドウ畑に着陸した確証はないので、これは一旦切り離して考えてみたい。
少年達は円盤型だったと言うのだが、その後に見たブドウ畑の物体に影響され、「頭上に来たのも円盤型だった」と記憶違いしたことも考えうる。宇宙人との遭遇という恐怖体験の後なのだから、直前の記憶が曖昧になり、恐怖体験の方の記憶に引っ張られることもあり得るだろう。
少年達の証言は尊重しつつ、他の目撃者の存在やヘリコプターなどの飛行記録が明らかになるまでは保留してもいいと思う。
着陸したUFOと宇宙人については、一つの仮定として、全身を覆う防毒マスクや作業着を着込んで農薬の散布や、草刈機で下草刈りでもしていたというのはどうか? 全てを説明できておらず少し強引かもしれないが、推測の叩き台としての仮説をお披露目したい。
シワがよったマスクが顔のシワに見えた。目がなかったというのもゴーグルなどで覆われていたか、暗くてはっきりわからなかっただけ。足の指が2本だったというのは単純に地下足袋を履いていたため。農作業なら何もおかしくない。
銃に見えたのは肩にかついだ散布用のノズルまたは草刈機の長い柄。作業をしていたのは背の低い老夫婦(たぶんブドウ畑の所有者)。
少年達がUFOに見間違えてしまいそうな車(轍が残っていたリヤカーのようなものかも?)かテント状の設備を設置し、照明を焚いて作業を始めようと(もしくは終わろうと)していた。
そこに少年達が現れたのに気付き、肩を叩いて「危ないから向こうへ行ってなさい」とでも叱ったのだが、マスクで声がくぐもって不鮮明になり、キュルキュルというように聞こえた。
そのうち大人達もやって来て騒ぎになっている感じだったので、面倒くさいことになったと思い、灯りを消してさっさと行ってしまった。
(Sさんの件については信憑性が怪しくなってきたので一旦削除)
翌日以降、案の定騒ぎになってしまい、正体が自分達だと打ち明けるのもためらわれ、マスコミやUFO研究家達の取材に対しても知らぬ存ぜぬで通した。
たとえば、宇宙人の正体は農薬散布でもしていた農夫ではないか? AGRI JOURNALより |
宇宙人が履いていたのは地下足袋? Amazonより |
誰かのイタズラ説
UFOブームの最中であり、人を脅かしてやろうという連中がいてもおかしくない。しかし誰を脅かすつもりだったのか?(誰でも良かったのかもしれないが)宇宙人の低い身長や、UFOに見せかけた何かを用意しあっと言う間に撤収するなどを考えると、子供だけ、大人だけのしわざとは考えにくい。
「そんなことをわざわざする人間がいるとは思えない」? いやいや、今も昔も酔狂な人間はいるだろう。
いずれにせよ、前後のUFOの目撃(見誤りも含んでいるだろうが)まで全てまとめては説明がつきそうにない。
個人的には、本件をまるっきりのでっち上げであるとは考えていない。なにぶん暗い時間帯で、幼い子供達の体験である。おそらくは本来なんてことないものの見間違いと思い込み、偶然が重なり、恐怖心とテレビなどで知ったUFOと宇宙人のイメージが記憶に干渉し、不思議な事件になっていったのではないかと推測する。
いずれにせよ、前後のUFOの目撃(見誤りも含んでいるだろうが)まで全てまとめては説明がつきそうにない。
総括
国内において最も有名で幾分の信憑性も感じさせるが、情報は当事者の目撃証言がメインで、それ以上の客観的な物証に乏しい。常識において考えにくいUFOと宇宙人(便宜上こう呼ぶが、宇宙から来たという証拠はない)というものを認めようとするなら、ハードルは高くならざるを得ない。個人的には、本件をまるっきりのでっち上げであるとは考えていない。なにぶん暗い時間帯で、幼い子供達の体験である。おそらくは本来なんてことないものの見間違いと思い込み、偶然が重なり、恐怖心とテレビなどで知ったUFOと宇宙人のイメージが記憶に干渉し、不思議な事件になっていったのではないかと推測する。
その場合、本人にとってはまさしく嘘偽りない真実だろうから、その体験自体は否定されたり咎められるものではない。(証言時についつい体験を盛ってしまったことも、考えられないことではないが)
それらをどのように証拠を得て説明できるかが焦点だ。
もちろん「まさしくUFOと宇宙人だった」という結論が導けるならそれも興味深い。
事件から長期間たっており完全解決することは難しいかもしれないが、常識と非常識の間を漂いながら、この事件について考察することを楽しみたい。
その後の動き
折に触れて元少年二人は、テレビのオカルト番組などに出演していた。
- 1982年12月15日放送 日本テレビ系「11PM」山畠さん、河野さん(高校一年当時)
- 事件7年後の保険外交員による証言に関して
- (1)https://youtu.be/h8IcOv1i2_g?si=Dd8A5TkpUqCiTi28&t=33
- (2)https://youtu.be/a75arAIwFQw?si=Lhw7lh6c6MWJJN-u&t=512
- 1990年1月5日 テレビ朝日系「素敵にドキュメント」山畠さん(21歳頃)
- インタビューと、UFO呼びに参加させられる(来たとされるUFOは木星)
- https://youtu.be/a2BkALq24gA?si=qFw8kOETPCvLdIj5&t=1431
- https://youtu.be/a2BkALq24gA?si=ZPvs9TT_D73513lc&t=3258
- 2001年頃放送 放送局、番組名不詳 山畠さん、河野さん(33歳)
- 2006年頃放送 YBS山梨放送「ゆうひのジャングル」山畠さん(38歳/匿名、顔モザイク)
- 2017年2月22日放送 フジテレビ系「世界の何だコレ!?ミステリー」山畠さん、河野さん(50歳)
2019年になると、「甲府星人」と名付けられた宇宙人のソフトビニール製フィギュアが発売されたりと、小さな動きはあった。
2021年には河野さんの姪が、そして2022年には山畠さんとその支援者が事件について語るYouTubeチャンネルをいくつか開設。
- キュルキュルラジオ
- 山梨未確認物体研究会AREA_X
- discover_yamanashi(←2024年現在、こちらが更新中)
さらに2024年の事件当日には、甲府市において事件49周年をテーマとした町興しイベントが開かれ、山畠さんも出演した。このイベントは一部の新聞やテレビでも取り上げられた。
- 朝日新聞DIGITAL:「宇宙人との遭遇」から49年 少年の思い出、UFOの日として認定
- UTY(テレビ山梨):49年前の“宇宙人・甲府星人”と当時の目撃者が再会 「甲府UFO事件」で地域活性化
- 東スポWEB:日本三大UFO事件の一つ・1975年の「甲府事件」の当事者が証言
またこの日を日本記念日協会から「甲府UFOの日」に認定されたという。
おことわり
これまでUFO事件簿では、本件が当事者が存命中の国内事件であることからK君、Y君という匿名で記載してきましたが、お二人が何度も実名でテレビ出演してきたこと、主に山畠さんが近年のイベントやネット動画で本件について積極的に発信していることなどから、実名表記に変更しました。(2024年1月・UFO事件簿 雅)
参考資料
- UFOと宇宙 1975年6月号 No.12/ユニバース出版社
- 世界UFO大百科復刻版(ムー特別編集)/学研
- 宇宙からの侵入者/南山宏/二見書房
- UFO事件クロニクル/ASIOS/彩図社
- ウンモ星人GOGO!!(ものぐさ太郎)
- 宇宙人の謎/並木伸一郎/学研
- 戯雅 blog/甲府事件現場緊急特別レポート
- 11PM(1982年12月15日)/日本テレビ
- 資料協力:どろ美さん
18 件のコメント:
海外の事例にも宇宙人の声が鳥のさえずりのようだったという証言があり興味深いです。
雅@運営者です
そういえば本件以外には宇宙人の声の情報ってあんまり知りません。
チェンニーナ事件の宇宙人が「リウライロイ…」と中国語のように喋ったとはありますが、声の高さとかそういうのは書いてなかったような。
宇宙人というと、のどをトントンやりながら「わーれーわーれーはー、うちゅーじんだー」と甲高い声でしゃべりそうなイメージもありますがw
失礼します。
ご存知かもしれないのですが…2017年2月22日(水)に東海テレビ「世界の何だコレ!?ミステリー(19:57~20:24)」という番組で、この甲府事件の当事者2人へのインタビューやっていました。お二人とも元気そうで、本人たちはやはり “あれは宇宙人だった” “滅多に経験できない貴重な体験だった” と話されていました。
雅@運営者です
こんにちは。
番組は自分も見ました。感想はこちらに書きました。
https://9315.teacup.com/ufo/bbs/t1/90
今年も同じ映像使って再度取り上げてましたが、新情報はナシです。
子供の嘘という説もありますが、少なくとも誤解させるような何かは実際にあったんだろうなと考えています。
生きてる間に真相がわかるといいんですが。
この事件で昨年辺りに雑誌に出た情報で、少年達が目撃した円盤と思われる物体がナチスドイツが開発したハウニブーⅢに形状が酷似しているという話と少年達が目撃した宇宙人の背中にチャックのような物があったという証言がありますが、それらの話から、どういう可能性が考えられると思われますか?
こんにちは。
ハウニブについては詳しくありませんが、開発の事実および実在が確認されていない噂程度のもののようですし、宇宙人の背中にチャックという話もこれまでのある程度信用できそうな資料には載っていないものです。
同じ雑誌に載っていたのでしたら、その雑誌、もしくはライターによる話題作りのための嘘か思い込みの可能性が考えられると思われます。
ちなみにどこが出している何という雑誌で、証言者とライターの名前は誰ですか? わかったら教えてください。証言者は目撃者のK君、Y君ではないと思いますが。
早速の返信ありがとうございます。雑誌は、学研の月刊ムーで、確認したら自分の勘違いで昨年ではなく、2017年の3月号でした。特集記事で「ナチスUFOと異星人接近遭遇「甲府事件」の謎」という、かなりのページ数で出てます。ライターは著名な並木伸一郎氏です。その記事では背中にチャックがあったという証言は、Y君の方で、Y君が書いた当時の目撃した宇宙人のイラストには確かにチャックのような物が書かれています。自分も他の雑誌やテレビのインタビューとかでも、その証言は聞いた事なかったですが、この雑誌には間違いなく正しい記事として出てます。もし、確認出来たら分かると思います。
まずお詫びと訂正から。
宇宙人の背中にチャックという記述は、事件当時1975年6月号の「UFOと宇宙」誌の記事中に、K君の証言として「洋服を着ていたみたい。背中がチャックのように……」とありました。宇宙人の後ろ姿を描いたスケッチにもそのようなものが描かれてますね。私の確認不足です。大変失礼しました。
むろん当時の資料だからとて全部そのまま鵜呑みにはできないでしょうが、もしそのチャック様のものが本当であったなら、本文にも書きましたが全身を覆う服を着た小柄な人達が作業をしているのを宇宙人と見間違えた可能性などが推測されます。以前はそんな目の前で長い時間見ていたものを見間違えるのはおかしいと思っていましたが、最近はどんなに目の前で見ていても、異形の何かに見間違うことがあると思う様になりました。もちろんまだ推測の域を出ていませんが。
ハウニブについてはムーにどのように書かれているかはわかりませんが、形が似ているからというだけで、何十年も前の遠く離れた国で作られたかどうかもわからない兵器が超常的な出現をしたという大無理があります。
自分は、この背中のチャックという証言から小柄な人間がマスクも被って宇宙人の扮装をしてたか、宇宙人のような生物がチャックの着いた銀のスーツを着てたかの、どちらなのかな?とも思えたのですが、その可能性も無いですかねー?ただ、少年達の証言が正しいとした場合、最後に発光した円盤が、その場から消えたような話もあるから人間の出来る事では無いと思うので人間の扮装みたいのも違うのかなー、とは思えます。それらを踏まえても、やっぱり、作業してた人の見間違えの可能性が一番高いと思いますか?
宇宙人の扮装だとすると、何のために? なぜこんな田舎町で? という疑問があります。
UFOが消えたというのはあくまでも遠目に光が消えるのが見えただけですね。
作業中の人の見間違い説も、そんな時期に何やってた? 何で「作業してた私たちでした」って名乗りを上げない? など考えなければいけない事は多いです。
いろんな解釈はできると思いますよ。ただこのコメント欄のやり取りだけで細かくお話しするのは大変です。
あと、返信する際はコメント下の「返信」ボタンでしてくれるとちゃんとツリーになるので助かります。
作業中の人の見間違え説だと、少年達が事件の日、不思議そうに見回ってたら作業中の人が「僕達、危ないから近くに来ちゃダメだよ」とか普通に言うんじゃないかと思いますね。あと、事件以前でも以後でも、そういう作業してる人達は見掛けてると思うから、さすがに少年でも違いは分かると思うし、親達は、さすがに、すぐに気付きそうですよね。
そういう考えもあると思いますよ。危険な作業じゃなきゃとりあえず作業が一区切りつくまでほっておいて、ようやく注意したのが例の肩を叩いてキュルキュルだったりして。
作業中の人説の場合で、キュルキュルという音が作業用のホースを巻き上げる音ではないかという説も一部ネット上で出てますが、それは、どう思いますか?
どうでしょうね? わかりません。
ちょっと気になったので知りたいのですが、運営者さんの前のコメントにあった、以前は長い時間見ていた物を見間違えるのは、おかしいと思っていたけど最近は長い時間見ていても異形な物と見間違える事はあると思うようになった、理由というか、きっかけは何だったのですか?
無視ですか?ちょっと、私とのやり取りは面倒くさかったですかねー?(笑)
聞けばなんでも答えてもらえると思った?
実際、ちょこちょこ一問一答みたいにあれもこれも聞かれるのは面倒ですね。こちらが答えるのはあくまで暇な時に好意で…ということになります。
また、家のmacOSがバージョンアップしてから普段使ってるSafariじゃなく、いちいちChromeを起動しないと運営者として返信できないので、それも返信遅らせてる一因です。
いくつもコメントつくとページが長くなって読み込みにも影響しますし、コメント通知が送られてこずに気づかない場合もあるなど使い勝手が良くないんで、こっちのコメント機能は閉じようかと考えてます。
コメントを投稿