情報ソース:国際未確認飛行物体研究所「これがUFOだ!」、読売新聞オンライン
記者会見の動画は他のサイトでの埋め込み再生ができないようになっていたので➡︎こちらからどうぞ。
UFO研究所YouTubeより |
福島県飯野町が町おこしの一環として、UFOふれあい交流館をベースに昨年創設した国際未確認飛行物体研究所(通称UFO研究所。月刊ムー編集長の三上丈晴氏が所長)の一年間の活動報告の記者会見が大手新聞などを呼んで行われた。
※UFOふれあい交流館:日本初のUFO研究団体である、荒井欣一氏の日本空飛ぶ円盤研究会の意思を受け継いだ施設だという
一年間で452件の目撃情報が寄せられ、写真か動画のあった149件の調査を行った結果、「極めてUFOの可能性が高い」とされるものが4件あったとし、三上所長が紹介した。(ただし調査精度は100%ではなく、また宇宙人の乗り物かはわからないとしている)
判定はUFO研の制定した「未確認飛行物体(UFO)評価判定基準」に基づき、CLEAR Level(情報の鮮明度、解像度)とMYSTERY Level(地球上の科学や自然現象で説明困難なレベル)を測定し、画像解析ソフトによって合成写真など人工的に作られたかどうかの確認も行なったという。
実際の写真、映像は情報ソースのUFO研のページで見ていただきたいが(画像、動画を保存すれば大きく見られる)、いずれもUFOとされる物体が比較的小さく映り込んでいるものだ。筆者の目から見て、真に不思議な物体とは言い難かった。
極めてUFOの可能性が高いとして紹介された4件
- 写真1
- 発見日:2018年9月3日昼頃
- 場所:長野県と富山県を結ぶ立山アルペンルート
- 発見者:長野県男性
- 連続して写真を撮ったところ、その内の1枚に黒い物体が写っていた。本人は鳥を疑った
- 判定:AAA1
- 鮮明度、解像度が高く、人工的偽造、合成の可能性が低い
- 地球上の科学力や自然現象では説明が極めて困難
- 写真2
- 発見日:2021年8月28日
- 発見場所:福島県福島市飯野町千貫森頂上
- 発見者:会津若松市小学校1年生男子
- 肉眼では確認していないが、後で写真を確認したところ写っていた
- 判定:s1
- 鮮明度、解像度が高く、人工的偽造、合成の可能性が極めて低い
- 地球上の科学力や自然現象では説明が極めて困難
- 動画1
- 発見日:2021年12月17日
- 発見場所:会津磐梯山
- 発見者:喜多方市男性
- 判定:不明(AAASかAAA1)
- 動画2
- 発見日:2022年1月
- 発見場所:福島県福島市飯野町
- 発見者:福島市男性
- 判定:不明(AAASかAAA1)
写真2の検証
公開された写真2を上下反転させたもの(上)と、アゲハチョウ |
写真2については、新聞報道後、ツイッターでアゲハチョウだろうという指摘があった。翅を広げてむこうに飛んでいる蝶を下から写している格好になるので、写真を逆さにしてみると、翅の模様らしきものまでうっすらと見える。これで確定的だろう。同写真では左端にも虫らしきものが2つ映り込んでいる。
三上所長、「被写体が近い気もするので、最終的なことは言えない。虫の可能性もあるかな?ということも置きつつ、バエる写真として紹介した」
一応は「虫かも?」という意識はあったようだが、それなら「極めてUFOの可能性が高い」として発表しない方が良かったろう。
写真1の検証
写真1についても同様に虫か鳥が疑わしい。肉眼では気づかず、写真を見返したら写っていたというのはよくあるパターンで、気にも留めないようなものがカメラ前を横切ったのが映り込んだのだろう。たまたま一般的にイメージされる円盤型に映ったところで、それがUFOであることにはならない。
また写真には他の登山客も映っており、本当に不思議な物体が飛んでいたなら別の目撃者がいてもおかしくはない。
動画1の検証
動画1について三上所長は「飛行機であるならライトの点滅がしているはずだが、それが見られない」「雲の手前で白く映っているから発光している可能性があり、自然界のプラズマか、UFOがプラズマに包まれている説もある」と語る。しかし昼間に、しかもかなり遠方の飛行機のライトが見えるものではない。筆者の見立てでは、よく見られるただの短い飛行機雲だ。
三上所長、BSの番組でもそうだったが、安易にプラズマというものを持ち出して説明しようとするのもいただけない。
ちなみに映像はドローンで撮影したような滑らかなカメラの移動が見られている。
動画2の検証
千貫森上空に現れた繭型のUFOとされる 公開された動画より |
動画2の撮影場所と方向 |
撮影場所のストリートビュー
動画2は調べたところ千貫森の西側から東にカメラを向けて撮影している。ちょうど千貫森のUFO研上空に光体が不規則な動きで浮遊していたことになるが、まずその出来過ぎな状況を指摘したい。
手振れがひどく光体の動きが分かりにくいのだが、手振れ補正した動画を見ると、ガラスに映った車内または車外の光ではないかと疑わしい。具体的な撮影状況が説明されないので推測になるが、ストリートビューで見ると歩道の外に車を停められそうなスペースがある。
もしガラスへの映り込みなら、なぜそこに停まって、わざわざ千貫森を写したのかも疑問だ。
後日、筆者は撮影場所に行って調査してきた。
撮影場所の背後の電柱に、ストリートビューで見つけておいたLED街灯が実際にあることを確認。それが映り込むようにカメラ前に透明のプラスチック板を置いて撮影すると、あたかも山の上に光体が浮かんでいるように撮れる。そうして撮影したのが上の動画。
カメラもプラ板も手持ちなのでずいぶん揺れてしまったが、どちらかでも軽く固定すればもうちょっと手ブレは改善するだろう。また、プラ板が少し曲がれば街灯の映り込みも歪むので、元動画のように繭型にもなる。
以上の検証より、おそらくはこうした方法で撮影された捏造動画と考えられる。
——ということで、どれも「極めてUFOの可能性が高い」とは言えない内容だった。過去に発見らくちゃくの件もあったので、こうした公営の組織が安易なUFO認定をすることには慎重になりたい。
これだけ詐欺、霊感商法、陰謀論が巷にあふれる中、「UFO研が言ってたからUFOはいるんだ! 壺を買いなさい!(?)」なんてことになっちゃダメでしょ? ひどいのになると、虫や鳥がちょっとブレたりピンボケしたりしている写真をUFOだなんて言ってる人もいるしね。
もっとも今回はSNSで「ムーの編集長が言ってるんだから最初から信憑性ないよね(苦笑)」みたいな意見も見られ、それこそ苦笑いだった。
町おこし自体にケチをつけるつもりは毛頭ないが、誤りをきちんと指摘するのは大切だし、それは難癖つけているわけではない。(時として指摘した側が悪者にされてしまうことがあるのだが…)
ただ、仰々しい名前をつけた研究所として荒井欣一氏の意思を継いで活動するというのなら、もっとしっかりとした真贋判定を行うべきだろう。
合成の可能性を調べた画像解析ソフトってどんなものだろうね? 何か専門のツールがあるのか、Photoshopで明暗などを変えて判断したのか? そもそも誰が解析、判定したの???
千貫森でUFOがよく見えるというなら、UFO研の屋上にでも全天を写せるライブカメラでも設置しておいたりすればいいのになと思うのだが。
というわけで、やるなら懐疑派が「これは一体!?」とうなるくらいの活動をお願いしたい。
【追記】政府の反応
共同通信ヘッドラインニュース
27日の記者会見で、UFO研究所の発表について記者から問われた磯崎仁彦官房副長官は、
「防衛省、自衛隊の活動によって得られた個々の情報については答えを差し控えるが、公表すべき特異な事案はないと報告を受けている」
「関連の報道や調査結果については承知をしているが、ひとつひとつについてのコメントは差し控える」
「一昨年の防衛大臣指示を踏まえ、空中における識別不能な物体について今後ともしっかり対応していく」と述べた。
——オカルト雑誌と組んだ町おこしイベントの、きちんとしたものとは思えない検証結果について問われる政府も迷惑だろう。
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