米国防総省の全領域異常解決局(AARO/UAPタスクフォースなどを引き継いだ部署)のショーン・カークパトリック局長とハーバード大学天文学部のエイブラム・ローブ学部長がまとめた論文「未確認飛行物体に対する物理的制約」において、「人工恒星間物体(恒星などに束縛されずに移動する人工的な物体)は、地球への接近通過中に多くの小型探査機を放出する母船である可能性がある」としている。
ただし、論文はまだ査読を受けていない初稿、いわば暫定版のもので、PDFファイルにもその旨の透かしが大きく入っている。
論文の中では2017年に太陽系内を通過し、史上初めて確認された恒星間天体「オウムアムア」を例に、オウムアムアのような母船から小型の無人探査機が発進し、地球を調査しているのではないかと疑いをかけている。
論文を機械翻訳でざっと読んでみたが(翻訳上の制限や難しげな式の記述などでわかりづらい箇所が多かったが)、「オウムアムアのような天体が人工的物体であるとするなら」といった仮定に基づいているようで、そうした天体が実際に人工天体である根拠や、発進した無人探査機が地上に来ているのかどうかといった点については、ほとんど述べられていないようだった。
ぶっちゃけて書くと、オカルト番組で「宇宙人はなぜ地球に来ているのだろうか? UFOの推進力は?」などと言うのと同様、エイリアン・クラフト(無人機を含む)が実在する前提になっているのだ。いくら査読前とはいえ、国防総省や科学者が書いたものとしては非常にお粗末だと言える。
UAPという国家防衛および航空安全上の問題を話し合う上で、海軍が撮影した不鮮明で航空機の誤認とも言われる物体がオウムアムアなどと同列で語られることからしておかしい。そもそもこれまでに公表された報告書における「説明可能なカテゴリー」としても、地球外文明由来ということは一切書かれていない。
可能性の一つとして、新たに異星人の飛来を追加するにしても、まずそうした地球外文明由来の宇宙船が地球に来ているか/来られるかを明らかにするのが大前提となるはずで、それをすっ飛ばして「星間旅行は大変なので無人機の可能性が高い」などと推測してもしょうがないのだ。
FNNプライムオンラインの木村太郎氏の記事では「UFO説にお墨付きが出た」としているが、Forbesの記事では「ローブ教授は誤りを暴くデバンカーではなくビリーバーだ」と手厳しい。
NHKあさイチ 2023/3/1より |
——このローブ教授、先日3月1日のNHK「あさイチ/キニナル! UFOの真実が知りたい!」においても「アヴィ・ローブ教授」として番組のインタビューを受けていた。
ローブ教授は以前から「オウムアムア=宇宙人の探査機」説を推している人物だ。
教授の率いるガリレオ・プロジェクトというのも、SETIのような遠い天体の文明の証拠を探すというよりもっと直接的に、地上の望遠鏡で異星人の文明や技術、さらには異星人由来の可能性があるUAPについても調査しているのだそうだ。
著名な科学者の中でもUFOをはじめオカルトを信じる人がいるので、肩書きに惑わされない方がいい。むろん教授らがUAP=異星人由来を調査することも好きにやってもらっていいのだが、国防総省の結論としてこういったものを出すとなると、本来の国防、航空の安全という主旨から外れますよ?
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