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ブリーフィングで発表するエリゾンド YouTubeの公式動画より |
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エリゾンドが「物体とその影」だとして発表した写真 X(旧ツイッター)より |
UFO問題を扱う政府機関AATIP(Advanced Aerospace Threat Identification Program/高度航空宇宙脅威識別プログラム)の元エージェントで米政府はUFOを隠していると主張するルイス・エリゾンドが、再びニセUFO写真を公表してしまった。
これは5月1日にエリゾンドの所属する民間団体UAPDF(UAP Disclosure Fund/UAP開示基金)が主催した連邦議会の「UAPを理解する:科学、国家安全保障、イノベーション」と題された、共和党議員や科学者らも参加したブリーフィングでのこと。
エリゾンドは民間のパイロットが撮影したという写真を掲げ、「真実性は保証できない」としながらも「21,000フィート(約6,400m)から撮影され、直径600〜1,000フィート(約180〜300m)。レンズ状の物体で銀色をしています」と、あくまでもUFO写真として発表した。
※UAPDFはユアン・ファン(Yuan Fung)という人物が代表を務め、エリゾンド、元国防情報担当副次官補クリストファー・メロンらが取締役を務める非営利団体ということだ。
UAPDFの公式Xアカウントでもこれをポストしている。
✈️ NEW PHOTO (civilian pilot)
— UAP Disclosure Fund (@UAPDF) May 1, 2025
Captured near Four Corners at FL210—estimated 600-1,000 ft in diameter, silver-hued, disc-shaped.
Released moments ago by @LueElizondo during our “Science, National Security & Innovation” panel. Several speakers confirmed DoD & IC hold hundreds of… pic.twitter.com/KHxkywz8JR
この事がSNSで報じられるとすぐに、様々なUFOに関心があるネット民から灌漑設備ではないのか?という推測がなされ、その後あっと言う間に場所まで特定されてしまった。
それはまさにセンターピボットと呼ばれる灌漑農場だった。
ブリーフィングの映像
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ブリーフィングの模様(第1部)(YouTubeより) |
下の動画とほぼ同じだが、音声が聞きやすい
ライブ中継版(音声が悪い)
参加者
第1部
- ルイス・エリゾンド(Luis Ellizondo)
- UAPDF取締役
- 元国防総省AATIPエージェント、元To The Starsアカデミー
- アヴィ・ローブ
- ハーバード大学教授、天文学者
- 恒星間天体オウムアムアが異星人の宇宙船である可能性を主張
- ティモシー・ギャローデット(Timothy Gallaudet)
- 元海軍少将、海洋学者
- アヴィ・ローブ主催のガリレオプロジェクトに参加
- 現役中にUAPやUSO(未確認潜水物体)の映像を見たという
- エリック・デイヴィス(Eric Davis)
- AATIPの博士?
- 天体物理学者
- アンナ・パウリナ・ルナ下院議員(Anna Paulina Luna)
- 共和党
- エリック・バーリソン下院議員(Eric Burlison)
- 共和党
- 他男性1名
第2部
- ルイス・エリゾンド
- クリストファー・メロン(Christpher Mellon)
- UAPDF取締役
- 元国防情報担当副次官補、上院情報特別委員会元参謀長
- カーク・マコーネル(Kirk McConnell)
- UAPDF諮問委員会メンバー
- 上院軍事委員会、上院情報委員会などを37年間務める
- エリック・バーリソン下院議員
第3部
- ルイス・エリゾンド
- マイク・ゴールド(Mike Gold)
- 元NASAのアソシエイトアドミニストレイター
- NASA UAP独立研究チームメンバー
- 宇宙企業ビゲロー・エアロスペース(超常現象愛好家の実業家ロバート・ビゲローの会社)に13年間勤続
- アンナ・ブレイディ・エステベス(Anna Brady-Estevez)
- 環境工学博士
- American DeepTech社(ディープテクノロジー投資会社)創設メンバー
- NSF(国立科学財団)在籍時はUAP関連企業への資金提供も推奨
- エリック・バーリソン下院議員
現場と正体はあっさり特定
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Googleマップで同角度を再現 |
現場地図
UFOに見えたのはセンターピボットと呼ばれる灌漑農場で、作物の有無などによって色の違いが生じ手前が黒っぽく写ったために、浮遊する物体の影のように錯覚したものだ。
画像にはフォー・コーナーズ(ユタ、コロラド、アリゾナ、ニューメキシコの4州の州境が点で接している場所)の近くと書かれているが、実際はそこから500kmも離れたコロラド州リンカーンであった。
エリゾンドが提示した写真は今の時代になぜか白黒写真っぽく、解像度も良くない。周囲をトリミングされているような感じもある。オリジナルの写真はどんなものだったのだろうか。
昨年もやらかしていた
エリゾンドは昨年も窓に映った天井の照明を本物のUFO写真だとして発表し、UFO肯定派を含む人々からツッコミを入れられ、恥をかいており、その時の反省が全く活かされていない。誰かから怪しげな写真をUFOだとして見せられると、ついうれしくなって発表してしまうのだろうか?
UFO程度のことだからまだ良かったが、この程度の分析力(そもそも分析していなさそうだが)でエージェントを務め、国を動かす一端であったことが恐ろしい。これが戦争や人を裁く場であったとしたら、いい加減な情報で人の一生を台無しにしかねない。
——UAPDFのクリストファー・メロンと言えば、我が国のUFO議連の総会においても基調講演をしている。同じ組織の一員がこんなていたらくでは、UFO議連に与える悪影響も心配される。
エリゾンド反論する
数々の批判を受けて、エリゾンドはX(旧ツイッター)において反論をポストした。
概要は以下のとおり。
- 写真はフォーラム開催前の朝、民間パイロットから提供されたばかり
- 写真の検証はまだしていなかった
- 自身が引用した寸法は、経験に基づいて独自に評価したもの
- パイロットの異常現象目撃時に、報告するための仕組みが必要だということを示すのが目的
- パイロットだろうと誰であろうと、異常と感じたことを公言した場合に建設的対話ではない激しい嘲笑に遭うと二度と共有しないことを学んでしまう
As you know, I am always first to admit mistakes, but this is not one of those times. The facts regarding the photo I shared from a private pilot (as I emphasized several times yesterday during the forum) are as follows:
— Lue Elizondo (@LueElizondo) May 2, 2025
1. The specific photo had only just been provided to me…
——人の誤りや無知をあげつらうことは確かに良くないし、批判も建設的であるべきだが、エリゾンドは国民の税金を使ってUAP調査に何年も携わってきたはずの人物だ。反論の趣旨はわかるが、前回同じようなことで批判を受けたばかりなのだから、発表にはもっと慎重になるべきだ。
そもそもエイリアン・クラフトは地球に来ておらず、誤認とインチキばかりなのに毎度こんなブリーフィングを開いて…とも思うが、その点は大目に見よう。
UFOについて素人であろう撮影したパイロット(氏名等は不明)が無知なのはやむを得ないし、これを嘲笑すべきではない。ただしそのパイロットが無批判なビリーバーであったり、悪意あるニセ情報をエリゾンドに渡したのでなければだが。ネットではパイロットが実在したのか?(エリゾンドの捏造ではないのか?)と疑う人もいた。
2025/5/7追記 エリゾンド、UAPDFを脱退
今回の件を受けてなのか、これまでUAPDF取締役を務めていたルイス・エリゾンドが脱退したことが発表された。
感謝とともに退任。私達の基盤作りを手伝ってくれた、退任するルイス・エリゾンド、ギャリー・ノーラン博士の両取締役、そしてマシュー・フォード戦略部長に感謝いたします。お二人のご多幸をお祈りいたします。
これによってUAPDFはクリストファー・メロンが取締役会長に就任。それと並んでユアン・ファンら3人が取締役会のメンバーを務め、ブリーフィングにも立席したアンナ・ブレイディ・エステベス、ティム・ギャローデット、マイク・ゴールド、アヴィ・ローブ博士、カーク・マコーネルら6人が諮問委員会を務めることとなった。
これに対しエリゾンドは「UAPDFが正しい方向へ進むための一時的な支援でしたが、その目標が達成され、素晴らしいクリス・メロン氏が舵取りを担うようになったので、私は情報開示に関する新たな方向性に向けて一層の努力を傾注していきます。」「今後も必要に応じてUAPDFを支援します。」とXで発信した。
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