トラヴィス・ウォルトン事件

1975年11月5日/アメリカ/アリゾナ州アパッチ・シトグリーブス国有林
Apache Sitgreaves National Forest, Arizona, U.S.

概要

トラヴィス・ウォルトン
UFOの光線に打たれた青年が、数日後に生還する。
真贋を巡り論争になった誘拐事件。

詳細

UFOとともに消えたトラヴィス

ウォルトンの別の写真
夕方、国有林の伐採の仕事を終えた7人の労働者達がトラックでの帰路、木立の中に光り輝くUFOを発見した。UFOは山道から30m足らずの積み上げられた丸太の4〜5m上に、直径4.5mほどのパイ皿を二つ合わせたような形で、黄白色のぼんやりとした光を発していた。ビービーという音を出し続け、音は高くなったり低くなったりしていた。

労働者の中のトラヴィス・ウォルトン(Travis Walton/22)がトラックを降り近づいていったところ、UFOはぐらぐら揺れ始めた。トラヴィスは丸太の脇に身を隠そうとしたが、UFOから発せられた青緑色の光線に直撃され、少し宙に浮いたかと思うと、凄まじい勢いで地面に叩き付けられた。
あまりの恐ろしさに仲間達はトラックで逃げ出した。400mほど走り、何も追ってこないとわかると、仲間達はトラヴィスを助けに現場に戻った。しかしトラヴィスの姿もUFOの影もなくなっていた。
トラヴィスの仲間が描いた事件の様子
仲間達は20kmばかり南の町ヒーバーまで行って事件を知らせた。保安官がやって来て現場を調べたが、やはりトラヴィスは見つからない。翌日から大人数による山狩りがおこなわれたが、UFOの着陸痕のようなものや遺留物、放射能の異常も見られず、何も得られるものはなかった。

11月8日、ニュースを聞きつけたUFO研究団体APROのメンバーが、仲間6人にインタビューをおこなった。供述に食い違いは見られず、別々に描かせたUFOの絵も同じ形をしていた。
トラヴィスが最初に会ったというグレイタイプの宇宙人
11月10日、警察は仲間達をトラヴィス殺しの疑いでポリグラフ(嘘発見機)検査をおこなったが、5人はシロ、残る一人アレン・ダリスは動揺が激しかったため判定不能であった。ただし、ポリグラフの質問内容はトラヴィスを殺したかどうかに関するものがほとんどで、UFOに関しては一つだけだった。

町ではトラヴィスとその兄がUFO好きだったこと、トラヴィスとダリスが不仲だったことなどが噂になっていた。
警察署長は「今回の出来事は金儲けのための芝居にすぎない」というコメントを発表した。

トラヴィスの生還と衝撃の告白

事件現場を指差すトラヴィス
その日(10日)の深夜、トラヴィスの妹夫婦のもとに、トラヴィスから息も絶え絶えの電話がかかってきた。今ヒーバーの電話ボックスにいるのだと言う。ヒーバーは彼が失踪した国有林の20kmあまり北である。急いで駆けつけると、彼は電話ボックスの中にぐったりと倒れていた。

トラヴィスの証言はこうだった。
「青緑色の光に撃たれた時、電気に打たれたかのようなショックを受け、気を失った。
意識が戻ると、どこかの部屋のテーブルの上に仰向けに寝かされていて、周りに3人の人が立っていた。
身長150cmぐらい、頭には毛がなく、目が異様に大きく、口、耳、鼻が小さかった。皆褐色のオーバーオールのようなものを着ていた。
驚いてテーブルから跳ね起き、近くにあった透明の器具を掴んで殴りかかろうとしたが、彼らは平然と出て行った。
自分も部屋を出ると丸い部屋に行き当たり、部屋の真ん中に金属のイスがあったのでそれに腰掛けた。
イスに付いていたレバーやボタンをいじっていたところ、部屋が暗くなり、星が見えて、それが動き始めた。
気配を感じて振り向くとまた別の男が立っていた。180cmほどあったその男は、前の3人より人間っぽい容貌で、ぴったりとしたオーバーオールを着て、透明なヘルメットをかぶっていた。
男に腕をとられ、広い格納庫のようなところに連れて行かれ、円盤のような物体をいくつか見た。
別の部屋では新たに男二人、女一人がいた。優しいそぶりだったが、突然後ろから酸素マスクのような物をかぶせられ、気を失った。
気がつくとハイウェーの路面に倒れていて、体の震えが止まらなかった。ヒーバーの自宅から数マイルのところだった。」

真相をめぐって研究団体の意見が対立

この事件をめぐり、二つのUFO研究団体の意見が対立することとなった。
トラヴィスの兄のデュエイン・ウォルトンは、UFO研究団体GSWのウィリアム・スポルディングに、衰弱した弟を診察してくれる専門医の紹介を依頼した。
しかしスポルディングが紹介してきたのが普通の医者でなく、事件の究明を目的とした催眠治療家のスチュアード博士であったため、不信感を抱き、治療前にトラヴィスもろとも帰ってきてしまった。
わずかな間だけだがトラヴィスを診たスチュアード博士は、腕の注射痕により、麻薬類による幻覚症状という診断を下した。これにより、博士を心理学顧問に置いていたGSWは、事件に否定的な立場を取ることとなった。

トラヴィス側はあらためてAPROの会員の中の専門医を紹介してもらった。APROは最初から事件に肯定的であった。
トラヴィスが戻ってきてから4日後にAPROと地元紙がタイアップしておこなったポリグラフ検査では、はっきりとクロと出たが、トラヴィスが興奮していたために判断つきかねるとして公表しなかった。
さらに3ヶ月後にイーゼル・ポリグラフ研究所で検査した結果はシロであったが、質問事項はトラヴィス側が用意したものであった。ただし、そのやり方は通常おこなわれている方法だという。

UFO研究の権威、アレン・ハイネック博士は、翌年APROの仲介でトラヴィスと面会し、好意的な見解を示した。

代表的なUFO否定論者であるフィリップ・クラスは、トラヴィス失踪中の妻と兄の態度は「今に帰ってくる」という程度でさほど心配していなかった点、ポリグラフ検査にまつわる疑惑、麻薬の前歴などを挙げ、期限内に終わらない場合の罰金が課せられていた伐採作業が遅れており、罰金逃れのために、半月前の10月20日にテレビで放送されたヒル夫妻誘拐事件をドラマ化した番組「UFOとの遭遇」をヒントに、事件をでっち上げたという結論を下した。
しかしAPROや事件関係者は、仕事を依頼されていた営林局との間に事件前後の契約トラブルは起きていないとして、それらを否定した。

事件後、トラヴィスは人が変わったようになってしまい、「あんな事件さえ起こらなければ…」とつぶやいているという。

現場周辺地図


より大きな地図で UFO事件マップ を表示
だいぶ詳細な位置と思われる。

考察

これも有名なアブダクション事件である。物的証拠がまったくないので状況証拠から判断するしかないのだが、GSWやクラスらの説が有力なように思える。
むろん、事件が真実であるなら気の毒としか言いようがないのだが、宇宙人達の誘拐目的も謎だ。

最初の3人の宇宙人は、典型的なグレイの宇宙人像である。どうもグレイが出てくる事件は、それだけでうさんくさく感じてしまう。


1993年に、事件を基にした映画"FIRE IN THE SKY"(邦題「ファイヤー・イン・ザ・スカイ 未知からの生還」/日本では劇場未公開)が作られている。
Amazonで中古ビデオを買って見たが、誘拐後の描写がグチャグチャのホラー映画みたいにされていて残念だ。アメリカ人はよほどグチョグチョな表現が好きらしい。
APROとGSWの対立などにも触れられていないが、興味ある方は参考程度に見てみるといい。

参考資料

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